ブラッシングは、飼い主さんと犬の絆を深めるだけでなく、犬の健康と美容にも欠かせません。毛艶がある犬は見た目も上品。なにより健康的ですし、飼い主さんまで上品に見えますよね。
ブラッシングは、抜け毛を取り除き、被毛の絡まりを防くだけではなくマッサージ効果で皮膚の血行を促進する効果もあるのはご存じですよね。
そこで、この記事では、一般的なブラッシング手順から犬種ごとのアプローチまで、ブラッシングによる愛犬の毛繕いサポートのポイントを探ります。スキンシップでありながら健康にも深くかかわるブラッシングについて解説します。これを機会に、是非ブラッシングを習慣にしてくださいね。
1. ブラッシングの重要性
前書きでも触れましたが、犬のブラッシングは、健康にも影響を与えます。ブラッシングによって抜け毛を取り除くことができ、新しい毛が生えやすくなることで被毛全体が若返り、健康的な被毛を保つことができます。
一方で、死毛と呼ばれる抜け毛が放置されると、皮膚への通気性が悪くなり、放っておくと、場合によっては発汗時に体温を逃がす通り道が失われ、蒸れを引き起こします。痒みや炎症を引き起こすこと原因にもなりますので、要注意です。
適切なブラッシングは、皮膚の血行を促進し肌の健康をサポート。健康な表皮(皮膚)から生える毛は、栄養を十分に受け取れますので被毛も良い状態を保ちますよね。
ブラッシングには毛に付着したゴミや汚れを取り除きながら皮膚までの通気性を回復し、健康な皮膚の維持にも役立つというわけです。
ブラッシングは、被毛の美容にも寄与。
犬は毛並みが整えられて清潔に。さらに表皮に付着している皮脂が均一に被毛に広がります。これにより、被毛がしっとりと潤い、艶やかに見えます。
毛艶が健康なヘアの輝きを取り戻し健康な外見を維持できるのです。
特に長毛種やコートがフワフワの犬種では、毎日のブラッシングが埃っぽさや絡まりを防ぎ、被毛の美しさを引き立てます。美しい被毛は飼い主にとっても自慢の子に。お散歩も楽しくなりますよね。
さらに、ブラッシングは犬のメンタルにも良い影響を与えます。
犬はマッサージのようなブラッシングを受けるとリラックスし、ストレスを軽減することができます。この飼い主との絆を確かめるブラッシングは、愛犬にとっても心地よい時間となります。
ブラッシングは単なる美容行為だけでなく、犬の健康全般に対するケアと言えます。
毎日の簡単なブラッシングが、犬の健康をサポートし、犬との絆を深める大切な時間とも言えます。是非、ブラッシングによる毛繕いの時間を通して愛犬との絆を深めつつ愛犬の健康と美容をキープしましょう。
2. ブラッシングの手順
2-1. ブラシとコームの違いと使い方
ブラッシングを開始する前に、適切なブラシとコームを選ぶことがきわめて大切です。ブラシとコームは同じように見えるかもしれませんが、それぞれ異なる用途があります。まずは、選ぶ際のポイントを説明しますね。
主なブラシの種類にはピンブラシ、スリッカーブラシなどがありますが、毛の長さや種類、用途によって適したブラシが異なります。ブラシは、主に抜け毛を取り除き毛並みを整えるために使用されますが愛犬の被毛に合ったものを選びましょう。
・ピンブラシ
ピンブラシが一般的に呼ばれるブラシで、細かいピンが並び店頭でよく見かけるタイプ。
ブラシのメーカーによっては、先が球状に加工してあるブラシや、ピンの長さを変えて梳きやすくしているものもあります。
長毛種で全体的にブラッシングを掛けたいときはピンブラシが適したアイテムです。
・スリッカーブラシ
もう一つの代表的なブラシがスリッカーブラシと呼ばれるもの。細かい金属の歯が密集して並んだ底面が平らなブラシで、歯先は曲がって毛を掻き出しやすい構造のため、スリッカーブラシは、抜け毛の処理に適しています。通常のピンブラシより歯が密集しているので、抜け毛処理以外にも被毛が比較的短く硬めの毛を持った犬種のブラッシングにも使われます。
・コーム(くし)
一方のコーム(犬用くし)。コームは歯の間隔が広いもの(粗目)から狭いもの(細目)まであり、被毛の状態・用途よって使い分けます。
細目コームは細かい絡まりのほぐし効果や部分的な固まった毛をほぐすときに活躍。ピンポイントで細かいお手入れに適しています。一方で、毛玉も少なく絡まりも少ない場合に使用するのが歯の間隔が広い粗目コーム。ですので、ある程度処理が終わったあと、ブラッシング後の仕上げに毛並みを整える時に利用されます。
特に長毛種や絡まりやすい被毛の犬には、コームが有効です。
2-2. ブラッシングのやり方・基本手順
ブラシとコームを用意したら、次に一般的なブラッシングの手順をご説明します。
全身のチェック:
まず、全身を手で触りながら異常がないか確認。大きなゴミや埃など異物や異常な感触があれば、それを取り除きます。
ブラシで抜け毛を取り除く:
ブラシを使って毛を優しく梳かし、まずは抜け毛を取り除きます。特に毛の生え際や絡まりやすい部分に注意しながら梳かしてくださいね。
コームで絡まりを解除:
続いて歯の狭いコームを使用し残った絡まりや固まった毛を慎重にほぐします
。無理に梳かそうとすると、皮膚にも力が加わるので最初は毛先から根本に向かって梳かすといいですよ。
特に長毛種の犬の場合、絡まる毛を痛がらせずに事前に発見することができます。
また、毛先から梳かすことで絡まりやすい部分も発見できますので、是非実践してくださいね。
耳やしっぽのブラッシング:
敏感な部分である顔部分もブラッシングエリアの対象ですよ。耳やしっぽもブラッシングが必要。長毛種でもスキップしてしまうケースが多く絡まりやすいエリアです。いずれもデリケートな場所なので、注意しながらブラッシングしましょう。
耳を梳かすときには、一緒に耳の中のチェックも忘れずに。
仕上げのブラッシングで整える:
最後に根元から毛先に毛を立ててブラッシングし、次に仕上げ用のコームで毛並みを整えましょう。
この手順でブラッシングすれば、抜け毛や絡まりのない艶のあるコートを実現します。
3. ブラッシングの頻度
犬のブラッシングの頻度やタイミングは、被毛の種類、長さ、毛量、活動レベル、季節などによって異なります。ここで説明する内容は一般的な目安として考えられる頻度やタイミングですが、犬の被毛の特性に応じて調整することが重要です。
3-1. 運動後やお散歩の前に
外で運動した後やお散歩の前が理想的なブラッシングタイミングです。
お出かけ前のコームでのブラッシングは身だしなみを整えること、そしてブラッシングによる適度な刺激で運動前に血行を良くしておくことで代謝を促進しますよ。
また、運動後や帰宅後のブラッシングは、まずピンブラシそのあとコームで。
犬の被毛の汚れが固まったり付着した異物が時間と共にこびりついたりするのを防いでくれるので、是非実践してください。汚れたらすぐに取り除くのが大切です。
犬の運動量も犬種によって様々。とはいえ、運動すれば汗をかき蒸れも生じます。運動量の多少にかかわらず、草が絡まったり、飼い主さんとのリーダーウォークでは衣服と擦れて静電気も生じます。絡まりの原因は意外なところで起こりますので、ブラッシングで毛玉や絡まりを予防、通気性をアップさせることが清潔で健康的な被毛をキープし、蒸れからくる皮膚疾患を未然に防ぐ大切な役割もあります。
3-2. 季節によって変わるブラッシングの頻度や意味合い
犬には換毛期があり、この現象は一般的に季節の変化に関連しています。主に春と秋に見られますが、換毛の原因として、日照時間や気温の変化、そしてホルモンバランスの影響が関係しているといわれていますよね。
日照時間の変化は、犬の生体リズムに影響を与えます。
春から夏にかけて日が長くなったり、秋から冬にかけて日が短くなったりすると、そのたびに体内のホルモンバランスが変化し毛の成長サイクルが調整されます。
さらに、寒冷な冬には保温のために密度の高い冬毛が生え、春には気温が上昇することで薄い夏毛に切り替わるなど気温の変化も換毛に影響します。
抜け毛は犬アレルギーの一因ともいわれ、浮遊する前にからだから除去することが予防策。犬にとってもブラッシングで死毛を取り除くことが健康維持につながります。
頻度をふやす、普段より念入りにブラッシングするなど抜け毛対策が必要です。日本の場合、湿気が高くからだが蒸れやすくなる夏は通気性を確保するためのブラッシングと考えてくださいね。反対に、毛が分厚くなり絡まりやすい時期の冬は、毛玉が絡まったり、団子状になったりするのを防ぐためにブラッシングします。
4. 被毛タイプの違いによるブラッシング
この章では、短毛種や長毛種、シングルコートやダブルコートなど犬によってことなるブラシやブラッシングの方法について説明します。
4-1. ショートヘア犬種
ショートヘアと言ってもやわらかな毛と硬めの毛の2タイプがあります。身近な犬種としてショートヘアでもやわらかなスムースチワワと少し硬めの毛質をもったダックスフント、そして、短毛種でもダブルコートの柴犬を取り上げて説明しますね。
チワワでスムースコートの場合、毛が密着するように寝ているので柔らかい短めのピンブラシがマッチ。
抜け毛が他犬種に比較して少ないため抜け毛対策としては週一回程度でも問題ありませんが、外出から戻ったらからだを拭くことや簡単なグルーミング用スプレーを使ったブラッシングしてあげると良いかもしれません。
お手入れは比較的楽です。ロングコートチワワは次の項目で説明しますね。
一方でダックスフントはショートヘアでも硬め。こちらも毛が密集しており、部分的に、例えば耳の周りや尾の先などに長い毛が見られます。
ダックスフントは密集した硬めの被毛でブラシとコームの併用が効果的!ブラシで表面の毛を整え、コームで絡まりやすい部分を梳かしてあげてくださいね。
長い毛がある尻尾の先や見見回りなどは絡まりやすいのでチェックしながらです。週二回程度はブラッシングしてあげましょう。
柴犬も短毛種と言われていますが、実際は、短毛種でも長めです。
また、ダブルコートなので、毛が密集して生えています。柴犬の場合、年中抜け毛が出ますが、季節の変化や換毛期になると特に抜け毛が増加します。このことから柴犬のブラッシングは定期的にすることが不可欠。特に柴犬が換毛期に当たる春と秋は念入りにブラッシング処理する必要があります。
柴犬は、ダブルコートで内側の柔らかい毛(アンダーコート)を取り除くのには、スリッカーブラシが最適。特に換毛期は、死毛がしっかり除去することができますよ。
仕上げは櫛でオーバーコート、アンダーコートをしっかり梳かしてあげましょう。毛並みを整えるだけではなく、櫛通りをよくすることで通気性もアップします。蒸れの予防にもなります。
4-2. ロングコート犬種
ロングコート犬種でも、ショート同様、硬い被毛を持った犬と柔らかい被毛を持った犬がいます。ここでは、硬めの毛を持ったトイプードル(ジャイアントプードルも)、柔らかい毛のマルチーズロングコートチワワについて解説しますね。
硬い毛質でカールしているため絡まりやすい毛質のトイプードル。トイプードルには適切なブラッシングが必要です。
トイプードル用ブラシは、ピンブラシがおすすめ。長めのピンブラシを使用し被毛全体を最初は軽く撫でるようにとかします。さらに、トイプードルの固まった毛や毛玉はブラシと指でほぐすようにし、保ぶれたらブラッシングを再開するというような流れです。
トイプードルのブラッシングも毎日欠かさず続けることで被毛がもつれにくくなりますよ。忘れやすい耳や足の内側といった場所は、デリケートな場所で毛玉ができやすいところ。ブラッシングの時に痛くないか仕草も観察して行ってくださいね。
一方で、柔らかい毛で良く知られているのがマルチーズやチワワ。
柔らかいシルキーな毛を持つためブラシも容易に中まで入りやすいという特徴があり、チワワのように柔らかめの歯を持った犬のブラッシングブラシはピンブラシがおすすめです。
マルチーズは、一般的に抜け毛が少ないといわれますが、ロングコードで絡まりやすいので、毎日のブラッシングが欠かせません。一方で、ロングコートチワワは抜け毛が多いといわれ、こちらもブラッシングは不可欠です。
マルチーズもトイプードルもトリミングが必要な長毛種ですので、定期的にカットしてあげてくださいね。
5. ブラッシングを楽しく
ブラッシング嫌いな愛犬に困っている飼い主さんも多いですよね。ブラッシングを少しでも楽にしたい場合は、犬目線で考えることが必要かもしれません。
流れとしては、捕まえていきなりブラッシング、ではなく、声を掛けて近づいたら抱えて(小型犬の場合です、もちろん!)その後ブラッシングです。
ブラッシングを嫌がる犬にはご褒美を準備することも忘れずに。
しつけの応用で、ご褒美とブラッシングを関連付けさせると良いかもしれません。お気に入りのおやつをブラッシングのモチベーションにするということですね。
まずは、ゆっくりとブラシを寝かせて力を入れずに梳かしてあげてくださいね。
最初のブラッシングは短めに:
最初から完璧にこなそうとすると長時間になりますし、我慢できない子もいます。すぐ、抜け出そうとしたり、噛んだりする子へのブラッシングは短時間で。毎日少しずつ伸ばして最終的に全身ができるようにするのが鉄則です。ロングコートの念入りブラッシングは毎日1回できるようにするのが目標。ショートの場合はコームで毛並みを整える程度で構いませんが、週一回程度はブラッシングしてくださいね。
また、ブラッシング中は、ガムなどををかじらせ、ガムに集中している間にブラッシングすると、おとなしくなるケースもありますのでおすすめです。
慣れた後も長時間にならないように:
ブラッシングに慣れると、気持ちよさがわかってくる犬もいます。とはいえ、一般的には、慣れてきても長時間になると、犬も疲れてきますので、休憩や遊びをはさみリフレッシュしながら。気分をリセットしてから再開するようにしましょう。
声を掛けながらブラッシング:
声がけも大切な要素です。犬は人の声のトーンにとても敏感!飼い主さんから安心感のある声で話しかけるようにしてリラックスさせてくださいね。
終わったら好物のおやつを与えて、「ブラッシング=終わったらおやつがもらえる!」という関連付けがブラッシングを嫌がる犬に使えますので、ブラッシング時間を長くしてゆく過程で試してみてくださいね。
6. まとめ
犬のブラッシングは、健康と美容に欠かせないケア。適切なブラシやコームの選定がポイントです。ここではファーストステップガイド的にわかりやすく説明しました。行きつけのトリマーさんでもアドバイスしていただけます。ブラッシングを楽しめるようにするには、まず犬も飼い主さんもリラックスが重要!ブラッシングを嫌いにならないように徐々に慣れさせてくださいね。