この記事では、歯磨きを嫌がる犬に定期的に歯磨きを実践したい飼い主さんや歯磨きに慣れさせる方法で悩んでいる飼い主さん、歯磨き中逃げようとしている犬を落ち着かせたい飼い主さんなど、歯磨きで悩んでいる飼い主さんに向けて解説します。
犬の健康維持には、食事や運動と同様に歯磨きも大切な要素です。犬が歯磨きを嫌がることは、よくあることですので深刻に悩まずに、まずは、犬が歯磨きをしない理由が何かを理解して取り組みましょう。
歯磨きは口内の細菌の繁殖を抑え、口臭を軽減するのに役立ちますし、何よりハグしたときに不快にならないようにするためにも口臭は無視できないものです。笑。
是非最後まで読んで参考にしてくださいね。
1. 歯磨き嫌いな犬、その理由とは?
犬が歯磨きを嫌う理由はいくつか考えられます。これらの理由を理解することで飼い主さんは効果的な対策を講じることができます。
まず、最初に挙げることができるのは、口の中の不快感。歯磨きの際に、歯や歯茎に触れることで犬が不快に感じることがあります。今まで歯を磨いたことがなければ、歯を磨くという行為は、犬にとって新感覚。飼い主さんも理解する必要があります。今まで歯磨きの経験がなければ虫歯が進行している可能性もあり、ますます歯ぐきも敏感になりますので、犬が歯ブラシを嫌がるのもわかりますよね。
臭いや味に対する嗜好性も関係してきます。犬用の歯磨きには、何種類かフレーバーも揃っています。歯みがきの臭いやフレーバーが犬の好みではないケースでは、歯磨きを嫌がることがあります。普段食べている好物に近いフレーバーを選ぶのが、歯磨き嫌いにならないポイントのひとつかもしれません。
最後にあげたいのが、歯磨きも飼い主さんとの信頼関係で好きにも嫌いにもなるという点です。飼い主さんが歯磨きの際に強制するようにアプローチすると、犬は歯磨きを嫌うだけでなく、飼い主さんに対して不安や緊張を感じるようになります。これが続くと、犬は歯磨きをさせる飼い主さんを嫌がったり、信頼を失ったりする可能性がありますので、犬の意思も尊重しつつ、慣らしていくことが大切です。
共通項としてあげることができるのは、「自分の意志とは関係なく異物を無理やり入れられる」、ということ。自然に嫌がらずにできるためにどうすればよいかを次の章で説明します。
2. 犬の歯磨きを慣れさせるためのステップバイステップ
犬に歯磨きを徐々に犬に慣れさせるためには、段階的に取り組む必要があります。ステップバイステップで解説しますね。
・ステップ 1
手で触れられることへの抵抗感払拭。最初のステップは、犬の口周りは、敏感な場所なので、触れても嫌がらないようにすることにです。いきなり指を入れるのはNG。まずは犬に優しく触れることから。
口のあたりを拭いてあげることでも良し、口や下あごの辺りをなでて触れられることに慣れさせましょう。力加減は、これから指ブラシ、歯ブラシの力加減をイメージしてくださいね。
・ステップ 2
犬の歯磨きでは口の開け方を学ばなければなりません。
まず、犬が口を開けるトレーニングを行います。口を開けたら軽く褒めて、おやつを与えましょう。歯磨きを嫌がる場合でも、おやつは口を開ける練習になります。しつけと同様、おやつが動機づけになって口を開くようになり、犬は経験によって歯磨きがご褒美と関連付けられます。
・ステップ 3
歯磨きの香りや味に慣れさせます。最初は指に少量つけて犬に指をなめさせることから。味、舌触りを感じて、歯磨きが口の中に入っても大丈夫ということを認識させます。舐めて、味や質感がおやつだと思う犬もいますので、その場合は、歯磨き開始です。中には好まないフレーバーで嫌がったり、歯磨きペースト自体を嫌がったりする子もいますので、まずは、ペーストに慣れさせることを考えましょう。
・ステップ 4
味に慣れたら、その次が歯ブラシに慣れさせることです。最初から歯磨きしようとせずに、まずは、噛ませるように歯ブラシの感覚に慣れさせましょう。何しろ、食べ物以外の異物が口の中に入り込むので、歯ブラシの感覚に慣れさせることはこれから歯磨きを続けていくうえで超重要だからです。
歯磨きの方法としては、歯に軽く充てる感じにして、様子を見ることがまず第一。次に、徐々にブラシを歯や歯茎に沿って左右に動かしてみて、嫌がったら無理せず最初のセッションは終了です。一旦休止でおやつをあげてくださいね。休憩をはさんでまた開始し、を繰り返すようにしましょう。無理やり進めないようにするのもポイントです。
・ステップ 5
いよいよ歯磨きセッションです。まずは、数秒から始め、成功した場合には褒めてご褒美を与えます。(都度都度ご褒美ですよ!)少しずつ時間を延ばしていきましょう。
まずは、歯磨きタイムは1分以上目指し、最終目標は少なくとも2分継続です。結構飼い主さんも疲れます、苦笑。一緒に頑張ってくださいね。
犬の歯磨き頻度は、最低1日1回、タイミング的には、食後30分以内なら歯垢が固まる前で汚れも落ちやすいので、食後に磨くのが良いかもしれません。
飼い主さんが歯磨きを意識するのは愛犬の口臭対策のためだと思いますので、笑。歯磨きさせようと思ったら、継続していくことが大切。
最初は大変でも生活のルーティーンになると、結構続けられますので是非頑張ってくださいね。
子犬を迎えてから生後どれぐらいで歯磨きを開始するのが良いのか迷っている方は、永久歯が生えそろう時期を以降に始めることを目安に。
子犬の場合、生後半年程度で永久歯になりますので、8カ月目ぐらいからがおすすめです。最初は週1~2回から開始するのが良いかもしれません。
子犬から歯磨きの癖をつければ、成犬になってもスムーズに歯磨きできるようになりますよ。
特に犬だからという理由で歯磨きのコツがあるわけではありません。とはいえ、初めての歯磨きではゆっくりとしたペースで行い、無理強いをしないことが基本です。
また、ブラッシングで皮膚の状態をチェックするように、歯磨きでは、歯ぐきや口の中の他の部分にも注意を払うなど、犬の口腔内全体の衛生・健康状態を確認することが大切と言えます。
3. 歯磨きアイテムの選び方
いうまでもなく、適切な歯みがきジェル(ペースト)や歯ブラシを選ぶことは、犬の歯磨きを短時間で慣れさせるために不可欠です。
3-1.歯磨きジェル・ペースト
歯みがきジェルやペーストの成分は犬の健康に影響を与えますので、必ず、歯磨きは犬用、もしくは犬猫用を使うようにしてくださいね。人用のペーストには、ムシ歯予防成分としてフッ素やキシリトール成分が含まれているケースがほとんど。ペットには有害です!
また、犬は、甘み成分だけは、舌で感じるといわれますが、ほんのり甘く作られているのが多いです。犬が好むフレーバーや香りの歯みがき剤を選ぶと、歯磨きが楽しくなります。チキンなどの風味が付いたものは犬も喜びます。
口臭予防には様々な方法があっても、犬の歯石除去に歯磨き粉は欠かせません。味・香りと成分は、犬の歯磨きの習慣化を促し健康を維持するための大切な要素です。
3-2.歯ブラシ
歯ブラシを選ぶ際は、犬のサイズに合ったものを選ぶのが基本。また、犬の歯ぐきはとてもデリケートなので、選ぶ際には毛質の柔らかい歯ブラシが犬用におすすめです。
歯垢が付着した歯を見てしっかり落とすために硬めの歯ブラシを選ぶと歯茎を傷つける可能性もありますので要注意です。飼い主さんにとっては、2分~3分磨いてあげることになりますので握って使いやすい形状かは大切かもしれません。
ネットで購入する場合は犬が嫌がっていないか、飼い主さんの評価も合わせて口コミは要チェックです。
犬用歯磨きには、指サック式の指にはめて使用するタイプもあれば、シート状もあります。指サック場ブラシは、指が直接歯にあたるため力の加減がわかる、さらに、歯ブラシのようなオブジェも視界にないため抵抗が少なく、(犬の性格にもよりますが)開始時は指サックを選ぶ飼い主さんもいます。
とはいえ、指サック歯磨きはスルッと抜けてしまう危険もはらんでいますので、指のサイズに合った滑りにくいものを選びましょう。同様にシートは、噛みちぎられる危険もありますので、要注意。
簡単だけに、注意しながら磨いてあげましょう。
3-3. 獣医師さんのアドバイスを仰ぐ
愛犬に最適な歯みがきペースト・ジェルや歯ブラシを選ぶ前に、獣医師に相談しても良いと思います。定期健診時に一緒にデンタルチェックをすれば、歯の健康状態を知ることができますし、犬用の歯磨きや歯ブラシについてもおすすめをアドバイスいただけるはずです。
4. 犬を歯磨き中落ち着かせる方法とは
いざ、歯磨き始めようとしたのに、歯ブラシを見ただけで、逃げたり隠れたりする子もいます。中には、犬が落ち着かずに歯磨きまで進めない!という飼い主もいますよね。
そんな飼い主様に、歯磨き中に犬を落ち着かせるためのヒントをご紹介します。
4-1. 歯磨きは落ち着ける環境で
歯磨きを行う場所や時間を適切に判断することは、犬がリラックスして歯磨きに対し抵抗感をなくす要素です。ではどういう場所が良いでしょうか。
歯磨きは落ち着いた場所がよい言われます。
歯磨き中は、気が散らないように、部屋の中で家族の誰かが歩き回ったりせず、テレビや音楽のボリュームは絞っては控えめにした環境に。お昼寝するお気に入りの場所があればその近くがリラックスしやすい場所なので、歯磨きする場所として理想です。
4-2. 1日一回なら日中の明るい時間がおすすめ
犬は私たちより視覚が優れているとはいえ、夜の時間帯や暗い場所では周りの環境を把握しにくくなります。暗い場所では視覚を補うための嗅覚や聴覚といった感覚が研ぎ澄まされるため、外部の刺激に敏感に反応しやすくなり不安が増幅される傾向にあります。
このような理由から、犬の歯磨きは明るく自然な光が入る時間帯に行うほうがより落ち着きを見せる傾向があり、歯磨きしやすいといわれます。
4-3. 手に慣れさせて開始しよう
まずは、歯磨きの前に、犬が手に慣れるように触れて、優しくなでることでリラックスさせましょう。
慣れないうちは、口を触られると緊張しますので、まずは口の外側に触れることから。その後、徐々に指だけで歯や歯茎に触れるようにして歯磨き体制に入ってくださいね。
歯を磨き始めても犬が抵抗したらブレークタイム。後でもう一度試してみます。特に、歯磨きを始めたばかりの時期は指を口に入れられただけでもストレスになりますの。最初はセッションは短く、を心掛けてくださいね。
4-4. ご褒美を忘れずに
落ち着いて過ごすことができるようになったら、口を触らせたり、指に付いた歯磨き粉をなめたりしたら、おやつをあげてくださいね。歯磨きの習慣づけで大切なのは、あらゆる段階でご褒美を準備してモチベーションにすることです。
4-5. ルーティーンとして取り込んで習慣化
歯磨きはできるだけ定期的かつ予測可能な時間に行うと、犬はルーティーンに慣れやすくなります。
同じ時間帯に歯磨きを行うことで、犬は予測可能な出来事として認識しますし、運動や散歩の後であれば犬はエネルギーを消費しリラックスした状態です。
心地よい状態にあるときに歯磨きを行うと、犬も協力しやすくなりますよ。また外から戻ったタイミングで歯磨きをすれば、日々のルーティーンとしても習慣にしやすいですよね。
5.犬の歯磨きのベストタイムは?
毎食後に歯磨きするのが良いとはわかっていてもそれが実践できる飼い主さんは少ないですよね。歯磨きのタイミングには、犬だけではなく飼い主さんの生活リズムにも左右されますので、歯磨き時間は出来る時間かどうかも関係してきます。
これから最低1日一回の歯磨きを目指すのであれば、飼い主さんにとっての判断材料がありますので、検討してみてはいかがでしょうか。
5-1. 夜ごはん後の歯磨き
犬の歯磨きを夜ごはん後に行う場合、寝る前の歯磨きを含む日々のルーティーンに組み込みやすくなるのはメリットです。
ただし、犬によっては、寝る前の歯磨きがリラックスタイムを邪魔するようなストレスになる可能性も。機嫌を損ねている状況が続く場合は、他の時間帯にすることをおすすめします。もちろん、夜だからこそリラックスする子もいますので、そんな子はもちろん夜歯磨きです。
5-2. 朝ごはん後(昼間)の歯磨き
昼間の犬の歯磨きは、精神的に安定している場合が多く、歯磨きもしやすいです。
抵抗なく終われるような経験を積み重ねるには、精神的にも安定している時間帯を選ぶことが大切。
昼間の歯磨きは、自然光の明るい環境なので飼い主さんも犬の歯の状態をより正確に確認しやすくなるというメリットもあります。飼い主さんのスケジュールが合う場合は昼間の歯磨きがおすすめです。
いずれの場合も食後30分までを目安に歯磨きすれば、歯垢が溜まるのを抑えることができますので、頑張って日課にしてくださいね。いずれも犬の個体差や好みに合わせつつ、歯磨きが犬にとって自然な生活習慣の一部になるようなタイミングを見つけることが大切です。
6.普段のケア
歯磨きだけにとらわれず、普段から愛犬のデンタルケアに気を配るようにしましょう。
特に歯磨きに十分な時間が取れないと実感している飼い主さんや、そもそも歯磨きをさせてくれない犬の飼い主さんは、それを補うためにも普段のデンタルケアが大切になります。
6-1. 適切な食事
適切な食事は歯石や歯垢の蓄積を抑えるために考慮すべき点のひとつ。歯の健康をサポートするフードを選ぶのもひとつのアイディアです。
歯の健康をサポートするフードには、栄養素として口腔内でカルシウムイオンと結合して歯石の形成を防ぐ働きのあるポリリン酸を含有しているフード、抗菌作用として働くミネラル成分として亜鉛も挙げられます。
また、カリカリの粒自体をよく噛むことで、歯垢を削る効果を謳ったドッグフードもあります。ポリリン酸配合で、歯磨き効果を狙ったドッグフードは、ロイヤルカナンの製品が有名かもしれません。
6-2. 噛むおもちゃ
虫歯予防のための噛むおもちゃもたくさん出ていますよね。
硬い素材の噛むおもちゃの利点は、歯の表面にあたることで、付着した歯垢や歯石の除去を促進する役目を果たします。間接的には、噛むことによって硬い素材が歯茎に刺激を与え、歯茎をマッサージする効果もあります。
歯ぐきのマッサージは歯周病予防に役立ち、歯の健康に良い影響を与えるといわれています。さらに、噛む行動は唾液の分泌を増加させ、唾液には歯垢や食べかすを洗い流す効果があるのもメリット。
一方で、よだれも出やすいので、よだれやけを起こしやすい犬や白っぽい犬は口周りが変色してきますので、時々口の周りを拭いてあげるなど、「プレミスティー」などでケアを忘れずにしてくださいね。
6-3. 歯の定期健診
定期的な歯科検診も大切です。犬の歯周病ケアの一環としても歯の健康状態をチェックし、年に2回ぐらいは口腔内を見てもらいましょう。口内炎などの歯の健康に影響を与える疾患があれば、早期に獣医師と相談することもできます。
7. 硬いおもちゃと柔らかい歯ブラシ
最初に犬の歯ブラシで柔らかい毛質のものを選ぶことをすすめて、犬の噛むおもちゃでは硬いおもちゃをおすすめする?
7-1. 犬のおもちゃと歯ブラシの用途
一見矛盾しているようですが、犬のおもちゃと歯ブラシでは用途が異なるのでおさらいも兼ねて簡単に説明しますね。
犬のおもちゃの目的
硬い素材のおもちゃは、犬が噛んだり噛み砕いたりすることによって歯の健康をサポートする役割があります。硬い犬のおもちゃは噛む行動を促して歯垢や歯石を削り取る働きがあります。歯茎のマッサージ効果もあります。
歯ブラシの目的
歯ブラシは犬の歯を優しく洗浄するために使います。歯磨きの際には歯ぐきや歯の表面にダメージを与えないように歯垢を取り除く必要があるため、柔らかい毛質の歯ブラシを使用します。
7-2. おうちでできる犬の歯周病予防
犬の歯周病ケアとしても、歯磨きと噛むおもちゃはお役立ちアイテム。噛みごたえのあるおもちゃ、毎日の歯磨き、そして、バランスの取れた栄養食が歯周病リスクを減少させます。
ドライフードのような硬い食事も歯の自然なクリーニングを促進します。
前章で紹介したように、歯の健康に特化したドッグフードもありますので歯石が気になる飼い主さんは試しても良いかもしれません。
構内洗浄液やジェルも選択肢のひとつ。これらの製品は歯石や歯垢の形成を抑える効果が期待できます。
8. まとめ
歯磨き嫌いな犬に歯磨きさせるポイントをまとめてみました。
ゆっくり慣らす: 犬にとって歯磨きは新しい経験。焦らずゆっくりと進めます。まずは恐れない、嫌がらない経験を重ねていくことが大切です。
褒めてモチベーションアップ:歯磨きの後におやつや褒め言葉を与えましょう。犬と信頼関係ができていれば、自ら進んで飼い主さんの喜ぶ行動をしますし、おやつで関連付けをすれば、進んで犬が歯磨きを受け入れるようになります。
柔らかいブラシや指ブラシの使用: 歯磨きが苦手な犬には柔らかい歯ブラシや指ブラシを使用し、歯ぐきに優しく当てるように。犬が嫌がらない歯ブラシの選定も大切です。
短いセッションから始める: 最初は短い時間から始め、少しずつ時間を延ばしていくことを心がけましょう。
歯磨きは予防医学
歯磨きの重要性は言うまでもありませんよね。
歯磨きは治療ではなく、予防の一環。早い段階からのケアが将来の歯のトラブルを最小限に抑え、口内環境の健康が全体的な健康に寄与する重要な手段です。定期的に継続的にできるデンタルケアが犬の健康を向上させます。「継続は力なり」です。一度やると決めたら今晩から開始!健康な歯をキープしてくださいね。