犬も高齢になると年齢と共に身体的な衰えが現れるだけではなく、細胞の老化によって免疫力の低下が起こり、病気になりやすい体質になります。
老犬との生活では定期健診はもちろん、日ごろから注意して行動の変化に気づいてあげることが重要です。
この記事では、高齢犬の健康管理、病気や症状の予防・対処法ほか、老犬になって、介護が必要になったときに飼い主が家庭でできることをまとめましたので、最後まで読んで参考にしてくださいね。
1. 高齢犬はいつから?
高齢犬の判断には、いくつかの特徴があります。以下に挙げた中で心当たりがあれば犬も介護が必要になる年齢に近づいてきたと言えるかもしれません。
1-1. 視力、聴力の衰え
視力が落ちてきたり、目が濁ってきたりするのは高齢犬の特徴。また、音が聞こえにくくなるのも高齢犬の特長です。
老犬になって目が見えにくくなると、部屋を歩行中に壁や家具などにぶつかったり、物を見失ったりすることが多くなります。暗い所、明るい所かまわず目を閉じたり困ったような表情をするのも視力が低下している可能性があります。
愛犬の名前を呼んだらパッと反応しますか?
いつの間にか名前を呼んでも反応しにくくなったと感じたら黄色信号かも。
そのほか、騒音に適応できないことがある、音に過剰に反応するといったことに見覚えがあれば聴力が低下しているとも判断できますので、シニア犬に仲間入りしたかもしれません。
1-2. 歩行困難
この場合の歩行困難は、以前と比べて足早に歩けないような状況を意味しています。
歩きにくさ、ジャンプや階段の上り下りが苦手になってくるのもシニア犬。
ですが、もともと階段は苦手な子もいますので、一概に老犬の判断にはなりません。
以前より歩きたがらない性格になったと感じたら体力や気力の衰えからくるケースが多いので、高齢犬の判断材料になります。
1-3. 皮膚疾患
肌荒れ、皮膚病が発生しやすいのも特徴。飼い主さんなら定期的にブラッシングをしているので日々の変化には気づきにくいこともあります。
とはいえ、ブラッシングをして毛艶がなくなったり全体的に白っぽくなってきたら白髪が原因のことも多いので、人と同じように老化の判断になります。
皮膚の張りもなくなったと感じるかもしれません。高齢犬になると抵抗力が低下すると肌荒れや肌の炎症も起こしやすくなりますので注意してくださいね。
1-4. 物忘れ
年齢が上がるにつれて犬の脳も老化し物忘れが増える傾向があります。
老犬の認知症はまだ解明されてないことが多いのですが、認知症になると小さいときからトレーニングで学んだことや日常生活のルーティーンを忘れることがあります。
ただし、物忘れは病気やストレスによっても起こったり、判断を誤ったりする点があるので、一度や二度間違いをしたために判断するのは早急。やはり飼い主さんが見ていて物忘れしやすくなったかも、と感じたら脳の老化を疑ってください。
高齢犬の場合、物忘れは日常生活に重大な影響を与えることがあるので飼い主さんは十分なケアを提供することが大切です。
2. 老犬の健康管理
健康管理は高齢犬にとって最も重要。シニアになったら定期的な健康診断や適切な食事管理、運動などが重要です。老犬になったら特に気を付けたい健康管理の項目について説明します。
2-1. 骨や関節の健康管理
老犬は骨や関節の病気にかかりやすく、特に大型犬種は関節症や股関節形成不全になりやすいので、適切な運動や食事管理で肥満を防止しながら、サプリメントの使用などで、骨や関節の健康を維持することが重要です。
2-2. 認知症の予防・対処法
前章でも説明しましたが、老犬は認知症にかかりやすく、物忘れや行動の変化などが見られることがあります。認知症の予防には、
・適度な運動
・飼い主とのインタラクティブなコミュニケーションによる脳の活性化、脳トレ
・栄養バランスの良い食事
などが有効です。
2-3. 歯や口腔の健康管理
老犬は歯周病や口内炎などの口腔疾患にかかりやすく、食欲不振や体重減少などの症状が出ることがあります。適切な歯磨きや定期的な歯科検診で口腔の健康を維持することが重要です。
2-4. 腎臓病の予防・対処法
老犬は腎臓病にかかりやすく、尿量の増減や食欲不振などの症状が現れることがあります。やはり必要なのは適切な食事管理と運動です。
2-5. がんの予防・早期発見
老犬は免疫力が低下し、がんにかかりやすい体質ではシニア犬に遺伝的症状がでやすくなるといわれます。
老犬は飼い主全員が通過するライフステージ。
シニア犬になって健康管理がしっかりできれば老犬介護生活をすこしでも遅らせることができます。是非、早めに対策しましょう。
3. 老犬の病気の予防と対策
すべての健康管理に言えますが、犬が高齢になって飼い主さんができることは定期的な健康診断、適切な食事管理や運動、日々のボディーケアなどです。
3-1. 定期的な健康診断
誰もが知っているように、犬の加齢は人の数倍速で進みます。子犬や成犬の時、年1回だった定期健診でも、人間にすれば、数年に一度とも言えますよね。
シニア犬になれば定期健診の間隔も見直ししなければなりません。骨や筋肉の衰えは見て気づく場合もありますが、器官の異常は、症状が出てから気づいても遅すぎる場合があります。
シニアになったらまずはかかりつけの獣医師さん相談。健診間隔を確認し、健康状態のチェック、必要に応じての治療や予防接種などを受けるようにしましょう。
3-2. 適切な食事の管理
老犬は食事内容や量を調整することで、健康維持に役立ちます。高品質なドッグフードを選び、栄養バランスに配慮した食事を与えることが大切です。
高齢になると犬は筋肉が落ちてきます。タンパク質は、筋肉や臓器の維持に必要な栄養素なのでタンパク質が豊富な食品を与える必要があります。高齢犬は、代謝も落ちるため太りやすく低カロリーで消化しやすい食品を与えることが推奨されます。
高齢犬は、また、食事の回数や量を調整することで、肥満や消化器疾患などの病気を予防することもできますよ。
3-3. 適切な運動量をキープ
老犬になったとはいえ、適度な運動は不可欠。老犬にとって運動不足からくる健康リスクを避けるために、短時間であっても日常的に軽い運動や散歩を継続するようにしましょう。
運動量は、室内飼い、外飼いでも違います。
室内飼いの場合、十分な運動をとることが難しいため、定期的に散歩をしたり、遊びやトレーニングなどを行い、適度な運動を取り入れる必要があります。
一般的には、1日、2~3回、1回あたり10~30分ぐらい。
老犬は、環境の変化に敏感に反応する場合があります。若いときのように刺激を与えるためにコースを変えるとかえってストレスになることがありますので、散歩するルートを決めて規則正しいリズムにすることがより大切です。
外飼いの場合、広い敷地で自由に運動できるため、室内飼いに比べて自然な運動を取り入れることができます。
散歩の目的は、運動だけでなく、季節を感じることで気分転換にもなります。
さらに、社会性の維持なども含まれますので室内飼いの場合はもちろん、外飼いの犬でも敷地外に出る機会を設けることが大切です。
いずれの場合も、骨や筋肉が衰えている高齢犬にとって長時間に及ぶ運動やランニング、ジャンプなどは老犬にとっても負担ですので、その日の体調様子を確認しながら運動量を調節してくださいね。
さらに、気温の変化にも配慮が欠かせません。老犬は温度変化に対して体温調節が苦手なので、真夏や真冬の時期に外で運動(散歩)するときには時間帯や環境に配慮しましょう。
3-4. 予防効果のある日常的なスキンシップ
シニア犬の域に達するとちょっとした毛繕いも一苦労になります。
そこで大切になるのが日々のブラッシングやお風呂・シャワータイム(ストレスにならない場合)でのボディーチェック。
老犬になると代謝が落ちて皮膚も炎症にもかかりやすくなります。老犬の床ずれも心配になる時期です。からだを触れば、腫れ物や皮膚の炎症にも気づきやすく、万が一の場合、早めに対処することができます。
また、トイレが上手にできなくなるとおしっこが毛に付着して、痒みや皮膚病の原因に。皮膚病の発見にも日常のスキンシップが役立ちます。
日ごろからのブラッシングは、マッサージ効果もありますので血行を促進にもプラス。血行促進は身体機能の向上にも役立ちます。
老犬のスキンシップの重要性は明らかですよね。
4. 日常生活の観察
高齢犬の健康サポートをするうえで、もう一つ大切なことが、日常生活の観察です。
当たり前に聞こえますが、老犬は、年齢による様々な健康問題を抱えることがあります。定期的な健康診断だけではなく、日々の生活を観察することで病気や異常を早期に発見することができます。
4-1. 行動の変化に注意
例えば行動の変化。老犬は、年齢や健康状態の変化によって、行動が変化することがあります。
普段のお散歩で階段や坂道の歩行がいつもと違っていたり、休憩するときにぎこちなくからだの向きを変えたりする場合は、体調に異変があるかもしれません。
犬が高齢になったら食事のときやお散歩に出かけるとき、就寝時の姿勢などを日ごろから観察しましょう。
活力や食欲の低下、便秘など体調の変化にも要注意です。日々の観察によって、このような変化に気づいた場合は、かりつけの獣医師さんで適切なアドバイスを受けましょう。
4-2. ストレスや不安に注意
老犬は、飼い主との絆や日常生活の変化によって、ストレスや不安を感じることもあります。日々の観察によって、これらの心理的な問題を早めに解決してあげましょう。
老犬の心理的な問題には、大きく3つ「ストレスや不安」、「寂しさ」、「認知症」などがあるといわれます。それぞれの問題に対して、おうちでできる対処方法を紹介します。
①ストレスや不安の場合
老犬の不安やストレスを無くすためには安心できる環境を整えることが一番。老犬にとって居心地のよい場所や環境を作りましょう。
例えば、落ち着いた場所にベッドを用意したり、愛犬が好きなおもちゃを与えたりすることが対策のひとつです。
高齢犬用のベッドに替えたときには、今まで使っていたタオルやシーツを一緒に敷いてあげるのもリラックスさせる方法ですよ。
老犬にとって、日々の生活のリズムを整えて不規則な生活を避けるようにするのは不安を抑える方法のひとつ。
例えば、睡眠時間、食事や散歩の時間を一定にし、予測可能な環境を作ることで、犬も安心して生活できますし、健康維持にもつながります。
②寂しさが原因の場合
老犬には、やはり心のふれあいです。愛情をたっぷりと注いで今まで以上に時間をかけてコミュニケーションをとりましょう。
家族や友人を招いて、老犬にとって楽しい時間を過ごせるようにしたり、愛犬の好みに合わせた遊びをするのは元気を回復させるのに役立ちます。
③認知症の場合
認知症が出てきた老犬にとっては、家のレイアウトが変わることは混乱する原因です。レイアウトは変えないようにしましょう。
高齢犬の家の中の環境と一緒に考えたいのがお散歩の環境です。老犬にとっては、規則的な生活環境が大切なので日常生活のルーティンを一定にし、同じ場所に散歩に行くなどの習慣をつくってあげましょう。
不安材料を取り除き、それでも解決しなければ、かかりつけの獣医さんに相談しましょう。
5. シニア犬用の生活環境の整備
最後に書きますが決して忘れてはならないのがシニア犬が暮らしやすいストレスフリーの生活環境です。どういうことをすればよいでしょうか。高齢犬に対応した家の中の環境について詳しく説明します。
老犬になると、筋肉も衰えるため機敏に動き回ることは困難になるだけではなく、目も以前と同じようには見えなくなることは説明した通りです。
シニア犬が家の中で生活するうえで大切なのは、動き回りやすい環境。トイレや食事などもアクセスしやすい場所にあり、高齢犬が生活しやすい段差の少ない部屋に替えていきましょう。
5-1. 階段ステップ スロープの活用
老犬になると跳躍力がおちるので、ソファのような高さのある場所には簡単に上がることができません。段差のある場所へ移動する必要がある老犬にとってスロープやステップは役立つアイテムです。
老犬になると関節の痛みや筋肉の可動域が狭くなるなどの問題を抱えるようになります。階段やスロープは、老犬が高低差の移動時にジャンプが不要になり、関節の負担が軽減されますよね。
高齢犬は足腰が弱いので段差のある移動でつまずく可能性も高いです。そんな時でも階段は、転倒や怪我を防止してくれます。
ステップやスロープは、ジャンプできなくなった高齢犬の移動をサポート。つまり、老犬が生活するうえでバリアがなくなりますので、移動の自由や適度な運動を作り出し、高齢犬のクオリティーオブライフ(日常生活の質)の向上にも役立つといえます。
5-2. 快適なベッドの準備
快適なベッドは高齢犬が安心して休める場所になります。大型犬ならからだを支える十分な広さが必要ですし、小型犬の場合は、楽に上り降りができる高低差の少ないベッドが適しています。
高齢犬ベッドは、柔らかいものよりも高反発と呼ばれるベッドがおすすめです。
5-3. カーペットの活用
マンションなど集合住宅で犬を飼われている飼い主さんは、すでにカーペットを敷いた環境課と思います。一方で、高齢になるまで庭で飼っていた飼い主さんやカーペットを敷かずに室内で育ててきた飼い主さんもいらっしゃると思います。
高齢になったら、足腰の負担を和らげるためにも滑り止め用のフロアカーペットを敷きましょう。大きなラグを敷く場合は、家具で動かなくしたり、滑り止めのついたラグを準備してくださいね。
5-4. 広々空間を確保
ベッドやトイレ、食事場所や玄関までの通路など、室内で移動する導線は、広めに確保。障害になる荷物も収納して、過ごしやすい生活空間を創ってあげると高齢犬も安心して生活できますよ。
6. まとめ
野生動物は、自分の不調を敵に悟られないように隠しながら生活しますが、ペットとして飼われている犬は飼い主さんにも自然に振る舞う傾向があるといわれます。信頼関係ができている飼い主さんだからこその仕草があるのかもしれません。
高齢犬に限ったことではありませんが、痛みや不調を訴えていないか日々観察してくださいね。予防と病気の早期発見が飼い主さんの役割です。