散歩は老犬にとって心とからだの健康維持に最適。ストレスを開放し、関節の柔軟性を維持、筋肉強化にも役立ちます。犬の老化は後ろ足の筋力低下に現れますので、健康的な生活を送るためにも老犬の後ろ足トレーニングは重要です。
1.老犬散歩のメリット
1-1. 老犬の身体機能の維持
老犬の散歩は衰えている筋力の強化につながるのは言うまでもありません。高齢になると、犬は大きな筋肉の後ろ足、人で言う太ももに脚力の衰えが始まります。
そのため、老犬では、後ろの大腿筋を鍛えることが運動能力をキープする秘訣になります。
高齢犬は、下りの階段を嫌がるようになりますが、これは高低差を認識したときの精神的な怖さと脚力の衰えからくるもの。階段を散歩に取り入れる際は、転倒に気を付ける必要がありますが、後ろ足を鍛えるのに、階段や坂道は効果的です。
散歩をすれば骨にも負荷がかかり骨密度もアップ。関節周りの筋肉が鍛えられることで関節の保護にも効果的です。
さらにさらに、老犬の散歩は、心肺機能の強化にも最適。呼吸器から心臓・血管まで鍛えることになるので循環器系全般の健康維持になります。
1-2. ストレスの開放
高齢の域に達した犬は、従来のようにからだの自由が利かなくなり、気力・体力が落ちてきます。高齢犬にとって散歩は適度な刺激になりストレス軽減にも有効です。外の環境に触れることで社交性も維持することができ、飼い主と一緒に楽しめる運動のひとつです。
2. 老犬散歩で注意することは?
老犬の外での運動が重要であることは前章でもお伝えしましたが、老犬の散歩には注意点もあります。この際に一緒に把握しておきましょう。
2-1. 散歩のペースは老犬に合わせる
老犬の体力や筋力は、若いときと比較して落ちています。老犬の散歩のペースは、とてもゆっくりですので、飼い主さんもゆったりした気分で、犬のペースに合わせながら散歩をするように心がけましょう。
飼い主も一緒の時間を楽しんでいるようにすることが老犬の気持ちに寄り添う上でも大切です。
2-2. 足元に注意する
老犬は足腰が弱く、転びやすくなっています。散歩の際には、犬の足元に注意するとともに、特に歩道に上がるときの段差に注意しましょう。また、道路は均された歩きやすい道を選んで通る配慮も大切です。
2-3. 出会う犬や人に注意する
老犬との外出では、犬が驚かないように注意が必要です。老犬は聴力や視力が低下しているため、他の犬や人が近づいていることに気づかず急に現れると感じることも。
老犬と散歩する際は、怯えたり驚いたりしないように飼い主が周囲の状況をしっかりと把握し、犬を守るように心がけましょう。
2-3. 散歩時の気温に配慮
高齢になると犬は体温調節が上手くできなくなるため散歩の際の外気の温度には注意しましょう。老犬の暑さでの熱中症や寒さでの低体温症は大敵です。
散歩では季節に合わせた服装や、適切な水分補給、外出時間、ルートなど臨機応変に対応することが大切です。
3. 老犬の後ろ足トレーニング
犬の老化は後ろ足から顕著になります。老犬になると筋肉の衰えと共に瞬発力など運動能力が低下します。特に、後ろ足は、大きな筋肉があるので後ろ足の筋肉の衰えが歩行にも支障をきたすようになります。
また、体力が低下し運動不足や肥満になることが多いのも高齢犬の特徴。これらが更なる後ろ足の弱まりに関係していると考えられています。
老犬の後ろ足トレーニングは、筋力回復や歩行バランスの改善にも役立ちますので、衰えてきたと感じたら意識して早めにトレーニングを開始しましょう。
3-1. 階段・ステップを使った後ろ足トレーニング
1ステップの設置:
ステップを購入するか、木箱などで手作りしてもよいかもしれません。犬の後ろ足を上げるのに十分な高さを設定したステップを準備しましょう。
2一緒に後ろ足トレーニング:
犬がステップを上がる前に、後ろ足を持ち上げ、ステップを上げる動作をサポートします。犬がステップを上がった後、後ろ足を下ろしましょう。
後ろ足を持ち上げるときには、「よいしょ!」という掛け声と一緒に飼い主さんも参加するといいですよ。
3上手にできたら褒美を:
犬が階段を上り切ったら、褒めたりおやつを与えたりして、ポジティブなフィードバックを与えましょう。犬のやる気を高めるのに役立ちます。
4高低差を付けていく:
最初は低いステップから開始し、徐々に高低差をつけていきます。ステップの高さを調整するときには、ステップと建物や家具の段差利用すると便利ですよ。
5 時間を延ばす:
最初は数回だけステップを上げることから始め、徐々にセッション回数を増やし、時間を延ばしていきます。
6 ステップでスタンディング:
テップの使ったスタンディングの後ろ足トレーニング方法も触れておきますね。
まず、飼い主さんは、おやつを準備してステップの正面に、犬はステップをはさんだ向かい側に待機させます。この時おやつを持っていいることに気づかれないように!
続いて、犬の前足をステップに乗せてスタンディング状態にさせます(2人一組でやるとやりやすいです)。そのまま前足をステップに乗せた状態で、ゆっくり一粒ずつおやつをあげましょう。立ち姿は、階段を上ろうとしている上の白い犬の写真を参照。
犬が後ろ足で半立ちする間、後ろ足の筋肉がが鍛えられますのでリハビリになります。
慣れてきたら家の中の段差部分とステップを利用したり、ステップの下に毛布を敷いたりしてステップの高さをあげ後ろ足への負荷を増やしながらことができます。
ステップを使用し老犬をトレーニングする際の注意点
ステップを利用した後ろ足トレーニングは筋肉の疲労が出やすいです。屋内でトレーニングする場合、老犬が転倒しないように、しっかりとサポートしてくださいね。
3-2. ウォーキングしながら後ろ足トレーニング
歩行時には、後ろ足を持ち上げる動作が自然に行われるため、筋力やバランスの改善に効果的です。とはいえ、長時間の散歩では老犬も疲労が溜まりますので、様子を見ながら適度な運動に留めるようにしましょう。
坂道ウォーキング:
緩やかな坂道を上るようなスローペースのウォーキングは、老犬の脚力やバランス感覚を向上させるのに役立ちます。
坂道がきついと思う場合は、老犬の負担を軽減するためにスローペースで歩くように心がけてください。
後ろ歩きや横歩き:
少し高度な動きですが老犬がバックステップやサイドウォーキングをすると、後ろ足の筋肉を鍛えることができます。散歩中にできる犬の後ろ足筋力強化方法です。
犬が時々後ずさりすることがありますよね。その時の後ずさりは、後ろ足トレーニングにもなるバックステップ。
散歩中に楽しみながら犬の正面に立って押し返すように遊びましょう。バックステップは周りにも気を配り、掛け声を付けて。
教えようと思っても難しい動作なのですぐにはできませんが、出来たら褒めたりおやつを上げたりしてモチベーションをキープしましょう。
ランニング:
散歩中に老犬と一緒に軽いジョギングをすることで、老犬の脚力を強化することができます。ただし、老犬の体力や能力に合わせた運動を行うように心がけてください。
歩行補助用具を使って:
脚力が落ちてきたと思ったら犬用の歩行介助用ハーネスを着用したり、カートを引いて散歩するのもおすすめの方法です。
歩行補助ハーネスは持ち手がついて体重を支えることができますので、散歩中でも疲れの度合いに応じて飼い主さんが調整できます。
犬用のカートは、安定性がありプライバシーも確保できるなど散歩で疲れやすい高齢犬にとってメリットが多いのも特徴。
シニア犬を乗せるカートを引きながら散歩に出れば、疲れた際の移動にも活用することができますよ。
いずれにしても、後ろ足トレーニングは体力も神経も使います。老犬の健康状態や能力に合わせて実施することが大切です。決して無理をしないようにしてくださいね。
3-3. 水中運動
実は、水中での運動は、後ろ足に負荷がかかりにくく、筋力やバランスの改善に効果的なのはご存じでしたか?
水泳や水中運動では、老犬の体重が軽くなるため運動量を調整しやすく筋肉を効率的に鍛えることができます。
水中では、浮力が生じ老犬の筋肉や関節に負担がかかりにくく、痛みを軽減することができるのはメリット。
浮力が働き四肢で全体重を支える必要がないため、老犬の筋力やバランス感覚など身体機能の維持にもなる点も水中運動のおすすめのポイントです。
老犬の水中運動は、後ろ足の筋肉だけではなく、体幹やからだ全体の筋肉を鍛えるのに非常に効果的な方法です。
水中ウォーキング:
水深が膝丈より深めのプールでは、水中で歩くことができます。
この運動は、脚の筋肉を強化し、関節を柔軟にするのに役立ちます。水深がより深い場合、泳いで脚を使うことになります。
犬用のプールでは老犬の後ろ足リハビリ用の水中トレッドミルがあるドッグトレーニング施設もあります。
後ろ足が弱ってきたと思ったら水中歩行やランニングは負担を掛けずに筋肉の成長を促すために非常に有効な方法です。
水中エクササイズ:
ドックケアスタッフがいる施設では、老犬が水中でエクササイズするのを手助けしてくれる場所もあります。
例えば、足を上げたり、膝を曲げたりするといった運動は、脚の筋肉を強化し、柔軟性を増やすのに役立ちます。後ろ足リハビリともいえるトレーニングです。
老犬それぞれに後ろ足の状態は個体差がありますので、トレーニング以上に本格的に開始する場合は、かかりつけの獣医師さんの診断も大切。愛犬の体力などが水中運動に適しているかどうかも確認しましょう。
浮き輪などの浮力補助具を使用する
家庭で後ろ足の水中トレーニングをする場合、浮き輪などの利用もおすすめ。老犬も楽により安全に水中運動を行うことができます。
自宅のプールで水中運動する際には、水温や水深には十分注意し、老犬にとって負担がかからないようにしましょう。
帝京科学大学「犬の水中運動における異なる水温下での身体反応からの適正水温の検討」による実験結果では、水中運動の水温は、30度で運動効果が高く、35度がリハビリには適温という検証結果もあります。
このことは、後ろ足リハビリ、トレーニングでは30度から35度を目安に水をためて自宅での水中運動の目安にしましょう。
水中では浮力が働きからだへの負担が軽いため、後ろ足の運動に慣れてきたら徐々に負荷を増やしていくと、犬の筋力の成長を促し後ろ足を強化することができます。
外部のリハビリ施設を利用する
大型犬なら温水プールやスパに連れて行くのが水中運動の定番ですよね。
外部のプールを利用してトレーニングする場合は、ドッグケアスタッフがいる施設であることを確認、さらに、事前にかかりつけの獣医師さんにアドバイスを受けてからお出かけすることが大切です。
老犬がプールで運動している間は、施設でも家庭でも絶対目を離さないようにしてくださいね。
老犬の水中運動後は、老犬をしっかりと拭いて乾かし、体温調節に注意することも忘れないでくださいね。
4. 老犬の散歩にハーネス
老犬をより安全に散歩させるためには、老犬介助用の散歩歩行補助具をおすすめしました。
後ろ足が弱って散歩から遠ざかるようになってしまった場合は、老犬用車いすもあります。
足取りが不安になってきた老犬には、歩行介助用のハーネスもおすすめです。
4-1. 老犬には首輪よりハーネスをおすすめ
老犬の散歩において、首輪とハーネスのどちらを使用するかは、犬の状態や飼い主の好みによって異なります。
ハーネスは犬の胴体に装着して使用するので犬の首に負担をかけずに散歩ができるという特徴があります。老犬になると首が弱くなっていることも多いので、一般的には気管への負担が少ないハーネスが向いているといわれます。
もうシニア犬かな?と思ったら早めに首輪からハーネスに切り替えるのもあり。後足腰が弱って歩行介助が必要になったときに、一般のハーネスに慣れておくことで介助ハーネスにもスムーズに切り替えられるようになりますよ。
ハーネスの種類もいくつかありますので、それぞれの特徴を説明します。
4-2. 後ろ足用ハーネス
後ろ足ハーネスは文字通り後ろ足を通して老犬の腹部をサポートしながら使用するタイプのハーネスです。老犬になると後ろ足の筋力が落ちることから、後ろ足の力が弱っている老犬に後ろ足を浮かせたまま歩かせることができるハーネスです。
前足の筋肉を落とさずに散歩の習慣を続けるには、後ろ足用のハーネスがおすすめ。後ろ足の疲労の度合いや筋力の落ち具合によって持ち上げる高さを調整できるハーネスです。
4-3. 胴輪ハーネス
胴輪ハーネスは、リフトハーネスともいわれ、胴体の周りに巻きつけるように装着するハーネスです。
老犬の胴体全体をサポートするタイプのハーネスです。
後ろ脚が弱っている老犬にも、飼い主さんががハーネスを持って引き上げることで、体重の足への負荷を抑えて歩行しやすくするハーネスです。
段差が大きい所、例えば、車に乗り込むときや、階段の上り下り、傾斜がある移動にもサポートできるハーネスです。
5. まとめ
散歩は適度な運動になるだけではなく、距離や時間など、犬の体力に合わせ飼い主んさんが調整することができるので、足腰の弱った老犬には最適なリハビリ運動方法です。老犬の散歩では、転ぶリスクが高くなるため柔らかい地面やデコボコしていない均された道や広場を選ぶようにしましょう。
また、運動という意味で軽い遊びは、筋肉をほぐして脳の活性化にも役立ちます。例えば、ゆっくりとボールを追いかけたり、簡単なトリックを教えたりすることで、徘徊など犬の認知症を予防にもなります。是非実践してみてくださいね。