老犬の介護において、介護用品のひとつベッド選びは非常に重要です。犬が高齢になり初めて介護を経験する飼い主さん、特に寝たきり犬の場合は床ずれにならないように細心の注意が必要になります。快適で適切なベッド選びが大切であることは言うまでもありません。
1.老犬にとってのベッドの重要性
見ていると気づく飼い主さんも多いとおもいますが、高齢になると、犬は睡眠時間も長くなり12時間以上になるのは珍しいことではありません。となると、長時間過ごすことになる老犬用ベッドやクッションは、とっても重要です。
犬は年齢とともに体力が低下する傾向があり、快適な休憩場所を提供することが疲れを軽減する手段。
老犬にとっては、良質の睡眠を取るための良質のクッションやベッドがより大切なのです。ベッドが快適であれば、からだの負担も軽減され体力の回復も早まります。
2.犬の介護ベッドの目的と使い方
ここからは、老犬の介護ベッドの目的や活用方法についても説明します。
2-1. 犬の周りを衛生的に確保する
介護ベッドは、老犬が安全に休めるようになっているのはもちろんですが、何よりも老犬の介護ベッドが衛生面で果たす役割は大きいといえます。
足が弱っていたり、寝たきりの高齢犬では、トイレもままならず、近くトイレを移動してもベッドで排せつすることがあります。
替えのシーツが洗濯できる介護用ベッドを使用すれば、万が一シーツが汚れても取り換えやすいようになっています。中には、丸洗いできる犬用介護用品もあり、クッションまで洗濯できるモデルもありますが、防水加工シーツ付きのクッション・ベッドなら部屋を汚すことなく介護ができます。
2-2. 犬の体圧分散をサポートする
老犬の介護ベッドは、犬の体重を均等に分散させるように設計されています。
特に、寝たきりの犬の場合、長時間同じ姿勢でいると、床ずれを起こすこともありますが、介護用のクッションは一般の昼寝用と異なり一か所に体重が偏らないように設計され、体圧が分散されるように工夫されています。これだけでも皮膚などの組織の損傷が起きにくく床ずれの予防に役立ちます。
2-3. 犬の快適さを確保する
犬の介護ベッドもまた犬が快適に過ごすために必要なクッション性を提供しています。犬の関節や筋肉に負担がかかることを防止し、犬の睡眠の質を向上させます。
また、長時間寝たきりの犬は、同じ場所や同じ姿勢から蒸れやすい環境になるため、通気性の高いマットレスやカバーが使用されていることも多いのが特徴です。
2-4. 老犬の介護を楽にする
高齢犬の介護ベッドには、犬の介護を容易にするための機能性が備わっている場合があります。例えば、防水性がある素材を使用した介護ベッドなら、犬の排泄物の処理が容易になります。湿布や投薬も介護ベッドの上ならより安定した状態で施術できます。
さらに、不用意に持ち上げると、無理な姿勢になりやすく骨や筋肉の可動域を超えて思わぬけがにつながることも。
犬用介護ベッドにはハンドル付き仕様も。飼い主は移動時に犬を介護ベッドに乗せたまま安全に運び、老犬にとっては安心して身を任すことができます。
犬用の介護ベッドは、犬の快適性を追求するだけではなく、飼い主が介護しやすくなる機能も備えていますで、活用しない手はありません。
3. より快適なベッドにするオプション
犬の介護用ベッドの中には併用をおすすめできるものがあります。場合によってはオプション品として準備されているもの、便利なものもあるので検討するのもよいかもしれません。
温熱カバーや保温シーツの利用:
老犬は関節痛や筋肉痛などの痛みを抱えることがあります。介護用ベッドに温熱シートや保温シートを併用することで、犬の痛みを和らげることができます。
防水シーツの使用:
老犬は膀胱の筋肉が弱まるのでトイレにたどり着く前に粗相や尿漏れを起こすことがあります。
犬の介護用ベッドには、専用の防水加工シーツを敷くことができますので、小さい防水、撥水加工のあるシーツがマットレスの防汚に役立ちますよ。
滑り止めシートの使用:
寝たきりの犬は自力で体を動かすことができず、ベッドでの安定性が必要です。ベッドの底に滑り止めシートを敷くことで、犬がベッドから転落することを防ぐことができます。
高さを設ける:
犬にとっては移動に不自由しない老犬の場合でも、高さがあるとアクセス面で不自由になります。
一方で、飼い主にとっては、高さがあれば、持ち上げも楽なので、場所を移すときには、ベッドに乗せたままスムーズに移動することができます。犬のサイズによっては、二人がかりとなりますが、介護時は疲れにくく、寝たきり犬を介護するときには検討してもよいオプションです。
足腰が弱っても散歩が可能なぐらい足腰が丈夫なら、トイレや食事、運動で老犬がベッドから降りるときには、楽に降りられるように入り口にステップを設けてあげることで解決します。
スロープの場合は、踏ん張りの利く滑らないものを選ぶように。
脚付きベッドの場合は、ベッド下が空間になっていますので、通気性を確保する意味でもプラスです。
バスタオル併用:
家にあるものですぐできることは、バスタオルの併用。
一人でマットレスから移動したり体位を変えたりするときは厳しいですが、2人がかりで介護する際にとっても便利なアイテムです。
4. 犬の介護用ベッドの選び方
では、具体的に老犬介護にはどのようなベッドがよいのか、老犬で寝たきりのケースでは、以下のような点を考慮して適切なベッドを選ぶことが重要です。
4-1. 老犬目線の介護ベッド検討項目
・ 保温性
寝たきりの犬は、ベッドにいる時間も長く、睡眠時間も多くなる傾向があるため、ベッドが保温性を持つ素材や構造を採用したベッドが老犬介護用ベッドに相応しいといえます。特に、冬場などの寒い時期には、犬が暖かく過ごせるように、夏は蒸れないように通気性のよいものに替えられるようなベッドなら言うことなしです。
・ サポート性
寝たきりの犬には、身体をサポートする機能があるベッドが適しています。例えば、体圧分散効果のあるマットレスを採用したベッド、犬の体を包み込む形状記憶マットなどがあります。
・ 快適性
寝たきりの犬にとって、快適なベッドは非常に重要です。ベッドは柔らかすぎず硬すぎず、犬の体にフィットするようなものが良いでしょう。また、犬の骨格や体格に合わせて、ベッドのサイズを選ぶことも重要です。
・サイズ
犬の介護、特に寝たきり犬の介護では、床ずれの防止やシーツの変更でからだを動かさなければなりませんので、介護ベッドのマットレスサイズは大きめを選ぶと作業が楽になります。
サイズ別に犬の種類が記載されているマットレスがありますが、サイズは実際のマットレスサイズを見て決めましょう。マットレスの長さは、老犬のからだ全体が乗るサイズ、幅は、ゆったりしたものを選びましょう。
4-2. 飼い主目線での老犬用ベッドの検討項目
・ 使いやすく軽量
寝たきりの犬ではには、入り口が低く、出入りしやすいベッドが適しています。また、ベッドの位置を変えたり、動かしたりしやすいように軽量なものが良いでしょう。
高さが変えられるベッドなら買い替えることなく、状況に応じて快適に使い続けることが可能です。
・ 優れたメンテナンス性
ベッドは頻繁に使用されるため、衛生面を考慮して定期的なメンテナンスが必要です。
5. 床ずれの原因とは
床ずれを疑ったら、まずはかかりつけの獣医さんに行くことをおすすめしますが、普段過ごす生活習慣の中にも床ずれの原因になる要素があるのは良く知られています。
特に、若年齢ステージから散歩嫌いの犬は、運動不足から筋肉が落ちやすく、疲れが出やすいので注意が必要です。
5-1. 長時間同じ体位で過ごす
運動量が減り、体力が落ちると長時間休憩するようになります。長時間同じ体位で過ごすことが、床ずれリスクを高めます。特に、硬い床で休むようになると骨が出ていて筋肉がない部分に床ずれリスクが高まります。
以下のイラストに示した場所は特に床ずれに注意してくださいね。
5-2. 肥満
運動不足によって、代謝が減り体重が増えると筋肉や骨に負荷がかかるため、床ずれを発症するリスクを高めることがあります。
5-3. アンバランスの栄養食や水分不足
栄養不足や水分不足が床ずれの原因になることが知られています。床ずれは、同じ場所が圧迫されることで皮膚が擦れる原因になったり、血流が滞り、うっ血したりすることで生じます。
また、水分不足が代謝力を弱めるために必要な栄養素が細胞のすみずみまで届かない一因で床ずれを起こすリスクが高くなります。
その他、病気を患っているときも床ずれを起こすことがあります。病気で犬が寝たきりになったり、腫瘍ができたりすると、痛みが感じない体位で長時間過ごすようになることが原因です。
6. 老犬の体調管理に必要な運動
歩けなくなってしまったと言って寝てばかりいたら、ますます健康を損ねてしまいますよね。
運動をすることで、老犬の筋力や柔軟性を維持し、関節の可動域を保つことができますし、運動によって血流が良くなり、代謝が促進されるため、老犬の健康維持につながります。心身のリフレッシュは大切です。
高齢犬にとって適度な散歩や運動は、フィジカルだけではなく心の健康にも良い影響を与えますので、体が動くうちは、軽めの運動でも継続することをおすすめします。
7. 老犬の床ずれ予防方法
老犬の身体機能の低下が床ずれの原因になることを説明しましたが、床ずれリスクは飼い主さんの普段の生活である程度予防することができます。
おうちでもできる高齢犬の床ずれ予防についてアドバイスです。
7-1. 適切な栄養補給と水分補給
丈夫な筋肉や骨を作ることが床ずれの予防にも貢献します。皮膚や筋肉の細胞を作るために必要なたんぱく質は肉や魚から摂取することができます。亜鉛は皮膚の修復に役立つ栄養素ですし、皮膚や筋肉の健康を維持には、ビタミンCも有効です。
これらを食事に取り入れて丈夫な骨や筋肉を作ることで床ずれリスクを低下させることができます。
オメガ3脂肪酸も、皮膚の炎症を抑える効果があるといわれ老犬の床ずれ予防にも良い栄養素。サーモンなど食事から摂取できますよね。
床ずれに効果のある栄養もサプリで摂取するといった場合は、かかりつけの獣医師さんにも相談しましょう。
水分補給も代謝を高めるために必要です。忘れずに実施してくださいね。
7-2. 定期的な体位移動
老犬の床ずれを防止する最も効果的な方法が、犬が長時間同じ体位で過ごさないようにすることです。座ったり、横になったりするときには、時々体位を変えるなど、圧力を均等に分散させることが大切です。2~3時間に一度が理想とされていますが、体重分散マットレスは一か所に負荷がかからないような設計になっていますので、寝返りさせる頻度をおさえることができます。
大型犬は、からだが重い分床ずれになりやすいといえます。大型犬介護時は、ジョイントと呼ばれる筋肉が薄いひざ、体重が乗りやすい腰、寝たきり犬では肩、ほおの床ずれに注意してくださいね。
高機能マットレスを過信することなく様子を見ながら体位を変えるのが介護の基本です。
体位変更について:
体位を変更するときには、必ず抱っこしてから。からだを持ち上げて抱えながら向きを変えるようにしてくださいね。
7-3. 日々のマッサージ
運動不足になると筋肉が硬くなり、可動域も狭くなります。血のめぐりも悪くなる傾向がありますので、犬の皮膚や筋肉を柔らかくし、循環を促進するマッサージは床ずれを予防にも効果的です。
痛がらない程度に動かしたり、軽くもんであげましょう。
ブラッシング時に、うっ血や皮膚の健康状態も確認するのも床ずれの早期発見になります。
7-4. 適切なベッドの選択
硬い床の上で長時間休むようになると血の巡りが悪くなり、床ずれになりやすいです。老犬には体格やサイズに合わせて適切なベッドを与えてくださいね。
寝たきり犬の介護が必要な場合は、床ずれを防ぐために専用の介護ベッドを使用することがおすすめです。
・体重負荷分散マットレスと高反発マットレス
体重分散を謳うマットレスは、からだが沈んでも均等に体重が分散するため長時間同じ体位でも一か所に重みが来ない構造になっているのが特徴です。体圧分散は点で支えるのもが多く、突起の部分の沈みを調整して体圧を分散し、血流を妨げない仕組みです。床ずれが疑われる高齢犬にとって休んでいるときに楽なのが体重負荷分散(俗にいう「低反発」)マットレスです。
一方で、高反発マットレスは、柔らかさがあっても押しかえす弾力があり、体重がかかっても沈みにくいのが特徴です。老犬の寝起きが楽にできるのはこちらです。沈みにくいために、下に手をもぐり込ませやすく飼い主さんの介護がしやすいといえます。
最近は両方を兼ね備えた素材もあります。
8. 寝たきり犬介護用ベッドのおすすめブランド
PEPPY (ペピー)
PEPPYは様々なペット用品を販売しているブランドですが、PEPPYから高反発の高齢犬用介護マットがあります。
PEPPYの老犬介護ベッドには、クッション材に東洋紡が開発したブレスエアーという素材が用いられています。繊維が複雑に絡み合い、空気の通り道を確保、高反発のため、人の介護用マットレスにも使用されていますので、ペット用の介護マットレスとしても申し分ありません。クッション全部丸洗い可能です。
gugu
グーグースリープのブランド名でマットレスを販売しているguguは、実は犬用のベッドも開発しており、「グーグードギー犬用ベッド」の愛称で親しまれています。低反発素材と高反発素材の二層構造も人と同じ。からだをしっかり支え、快適な居心地を確保します。
周りの縁が少し高くなっており(約15cm)、高さがあるので、健康状態によっては低めのステップを一緒に使用することをおすすめします。防水シーツはMustアイテム。
Sealy シーリー
ホテルのベッドに導入されているアメリカのベッドメーカー「シーリー」が作った介護ベッドは、老犬介護ベッドの要素を備えた上でマットレスに快適性をプラス。
アメリカのメジャーベッドブランドでプレミアムな気分になりたい人は一択です、笑。
9. 老犬用ベッドは介護の負担を軽減する
適切なベッドを提供することで、介護の負担を軽減することができます。
犬がベッドにいることで、飼い主さんは犬を寝かせた状態で世話をすることができます。また、ベッドがある場合は、犬の排泄物の処理が容易になります。
犬のマットレスは、決まった休憩場所になります。これはメリット。
おしめを身に付けてもズレることがあり、苦笑、排泄物がフロアに広がる経験をしたことがある飼い主んさんもいますよね。
だからこそ、専用のベッドを与えて決まった場所で休ませるようにすることで、粗相のリスクはかなり抑えることができます。
また、トイレシートなどの生活用品を敷くことで、犬の排泄を予測してすぐにトイレに誘導することもできます。ベッド周辺は清潔さをキープでき、犬の健康や衛生管理をしっかり維持することができます。
寝たきりの犬の場合、体勢を変えながら排泄物を処理することが困難なケースもあります。ベッドがあれば飼い主が抱えてその場で排泄物を処理することができます。
ベッドが床よりも高い位置にある場合、犬の腰や背中に負担がかからず、処理がしやすくなる場合があります。
総じて、介護ベッドは犬の排泄物の処理を容易にします。
10. 高齢犬ベッドの置き場所にも注意
全てのライフステージに言えますが犬は静かで落ち着いた場所を好みます。音についてはある程度慣れているとはいえ、より静かな環境で過ごすことができるように、テレビや音楽の音は控えめにしてあげましょう。
老犬用ベッドでおすすめなものは、保温性があるものということをお伝えしましたが、ベッドの置き場所も日当たりのよい場所がおすすめです。(とはいえ、夏場の日差しはもちろん要注意です!)
理由の一つが老犬のからだの機能低下があります。高齢になると、犬は心臓や肺などの器官の機能低下が起こります。疲れやすくなるために運動量も減少し、からだの筋肉量や脂肪量が減少します。
これらの身体機能の低下が、犬の体温調整能力にも影響を与える原因ですので、なるべく暖かく過ごすことができる場所を選んであげましょう
ただし、一階ですぐ横が通り道になっているようなケースでは人通りの気配を感じ、ストレスになることも。少し、窓や出入り口から離してカーテンや部分目隠しを使って落ち着いて過ごせる環境にするなど、臨機応変に対応してあげましょう。
また、高齢犬は、排泄物のコントロールが難しくなっている場合があります。ベッドの置き場所は、介護や清掃がしやすく、人が介護する十分なスペースを確保できる場所を選ぶことが介護を楽にします。
11. まとめ
老犬になったら床ずれには細心の注意を。日々のブラッシングやマッサージでからだの異変に早く気付いてあげることは老犬の床ずれの予防になります。
長時間過ごすベッドだからマットレス選びは大切ですが、老犬になると精神面からの支えも不可欠。高齢犬が過ごしやすい生活環境になっているか室内のレイアウトも確認してくださいね。