しつけにもいろいろありますが、子犬を迎えてからやるべき重要なしつけに社会化の形成があります。
この社会化は成長後の気質を左右するため、子犬を迎えた飼い主は、早めに社会化トレーニングを開始したほうが良いといわれます。
聞いたことがあるけれど、犬の社会化って具体的にいうと何?そう思われている飼い主さんもたくさんいますよね。
この記事では、犬の初心者飼い主さんにもわかりやすいように、犬のしつけで将来にわたって影響を及ぼす子犬の社会化について、3つに分けて説明しました。
・子犬のしつけ「社会化」って何?
・しつけで社会性の習得が必要な理由
・初心者向け犬の社会化6つのポイント
最後の章、子犬の社会化6つのポイントについては、ページを割き詳しく説明していますので、是非参考にしていただければと思います。
1. 子犬のしつけ「社会化」って何?
もし、犬の世界にコミュニティーがあるとすれば、犬同士がうまく付き合っていかなければなりませんよね。
親犬が子犬の面倒を見て犬社会のルールをを教えたり、幼少期に兄弟達と一緒に過ごすことによって遊び方や交流方法を学びます。
いわば、犬のコミュニティーで生きてゆくためのスキルを普段の生活から習得します。これが犬社会における社会化です。
一方、新しい飼い主と一緒に新しい環境や人間社会で生活するためには、そこで過ごすためのマナーやルールなどを覚えなければなりません。
飼い主は、周りの環境に溶け込めるように迎えた犬をしつけますが、これが人社会で生きるための社会化です。
さらに、人間社会で生きてゆくためには、人だけではなく、他の犬、猫といった動物に対する振る舞い方、接し方も習得しなければなりません。
子犬の社会化を促すことは、飼い主にとっての利点も多く、養育上のストレスを減らすことにもつながります。
2. 子犬のしつけで社会化の習得が必要な理由とは?
2-1 社会化の時期
人の養育においては、「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、犬の養育も同じようなことが言えます。
幼犬の早い時期に身についた社会性は、のちの性格形成に大きな影響を及ぼします。
子犬時代に身に付いた気質や特徴は、成犬になってもを変わらないので、幼犬時代の社会化しつけがとても大切なのです。
一般的に、子犬の社会化のしつけは、生後3か月ぐらいまで最も適しているといわれますが、実際に私たちが子犬を迎えられるのは、生後56日以降。
56日間(8週間)は、親犬から子犬を引き離すことが改正動物愛護管理法で禁じられているからです。
環境省は、その内容を、一般飼い主向けのパンフレット3ページ目にはっきり記載し啓蒙しています。
となると、子犬を迎え飼い主は、すぐに社会化のトレーニングをしなければ間に合いませんよね。
適している時期というのは、自己主張がなく、犬の性格が形成される前なので、飼い主さんのしつけも素直に聞ける時期。社会化のしつけがしやすいのです。
2-2. 犬の社会化を育むのは新しい飼い主
子犬を引き取ったのが、ブリーダーでも、保護センターでもペットショップでも、これから親になるのは、新しい飼い主。
犬の性格は、種類や親から受け継がれる性質からくる部分もありますが、社会性は、主に子犬時代の飼い主の接し方で決まると言われます。
子犬時代に様々なことを経験することで社会への順応性が身に付き、状況に応じて柔軟に対応することができるようになります。
・見知らぬ人に警戒心を抱かず、無駄吠えしない(他人に慣れる)
・すぐに噛まない(噛む衝動を抑えられる気質にする)
・うろついたり、イラついたりしない(音や動くものなど、周りの環境に動じない)
・飼い主の命令を理解し、勝手な行動をしない、いたずらをしない(飼い主の指示に素直に従う)
適正な犬の社会化ステップによって、問題行動を抑えることができれば、飼い主も大助かりですよね。
2-3. 社会化が世界を広げる
社会化の重要性に気づくのは、いろいろなアクティビティーに参加するようになってから。
散歩が日課になり行動範囲が広がると、飼い主さんも愛犬と一緒に旅行するのが楽しみになり、ドッグランにも行きたくなります。
そのような時に問われるのが、犬の社会性です。
慣れない賑やかな場所や見たこともない景色で興奮するのは人だけではありません。
犬連れの旅行では、人込みでも平常心をキープし飼い主さんの言うことをよく聞いて落ち着いて行動できる犬の社会性が問われます。
ドッグランでも、犬の触れ合いに慣れてないと、無駄吠えの原因や、性格によってはしり込みしてしまうこともあります。
自由にどこでも連れて行けるようになるためにも子犬時代のしつけは、とっても大切なのです。
子犬を飼い始めた飼い主向けのパピーパーティーやパピークラスというのもありますので、利用するのも手です。
3. 犬の社会化トレーニング6つのポイント
しつけをしっかりすることができれば、周りの突然の変化にも動じることなく噛み癖や無駄吠えを無くすことができるようになります。
そのためには、子犬の時に、今後直面する様々なイベントに対して免疫をつけなければならず、社会性の習得は、しつけによって可能になります。
飼い主が犬の社会化形成に携わるなら信頼関係は不可欠。
少しおおげさかもしれませんが、犬のしつけには、飼い主がリーダーになり、犬の社会化トレーニングをする側に立たなければなりません。そのために必要なのが愛犬との絆です。
3-1. スキンシップで絆を深める
・からだ全体を触り、触れることに慣れさせる
スキンシップそのものは、犬の社会化に直接関係しません。
からだを触られるのは、自由が利かなくなるという意味で、大抵の子犬は嫌がります。ですので、逃げようとしても気にしなくて大丈夫。
ゆっくりでも嫌がらないようになれば、信頼が芽生えた証であり、絆を深めるきっかけに。絆は子犬の社会化形成に大きく前進します!
スキンシップは、愛犬のボディーケアや健康チェックにとても役立つので、絆を深める時間であること以外にも直接役立つ訓練と言えます。
具体的に説明しますね。
犬の頭を撫で、おなかや足を触ってスキンシップをする
これから定期的なシャンプーが必要になることを考えると、からだに触られることに早い段階で慣れる必要があります。
まずは、遊び感覚でいろんな場所に触れて、愛犬がしつけ中に飼い主に触られることが、ごく当たり前になれば、シャンプーへの抵抗も小さくなります。
絆が深まればへそ天も可能に。へそ天のしつけでは、おなかや股など、普段の生活で隠れて見えない場所のコンディションチェックができるようになります。
・しつけの基本ボディータッチが上手にできない場合のヒント
頭をなでるときに、後ずさりする犬もいます。正面から手が迫ると、敵が迫ってくると感じるのが原因だと言われます。
頭をなでるときは、正面から迫らず背中から手を回すように撫でると抵抗が和らぎます。
子犬がしつけ中に触ろうとしたり捕まえようとする場合は、おやつを活用してみることをおすすめします。
気持ちがおやつに向いている間に、からだをさわられても意識がおやつに向いているので逃げません。一方で、撫でてあげる感触はからだに残りますので、触られることへの抵抗感が薄れることがあります。
とはいえ、どの犬もこれらの方法でボディータッチが解決できるとは限りません。あくまで解決方法も一つとして試してみてくださいね。
社会化のしつけも、おやつを上手に活用することをおすすめします。
しつけで指示通りに動いてくれた場合は、おやつをインセンティブにすることで、子犬にとっては楽しい社会化トレーニングになります。
口を開けて、口のなかをチェックする
特に何かを飲み込んだから、食べたからではなく、飼い主が口の中を見たいときに開けさせるように愛犬をしつけることで口の検査が容易になります。
口の中がチェックしやすくなれば、歯磨きも楽ですよね。
やさしく耳を触る
耳もボディータッチに慣れさせる部分です。
頭を撫でたついでに顔を近づけてニオイを嗅いだりしてあげると、飼い主さんは、しつけの一環として普段のきれいな状態のにおいを認識できます。
病気や汚れが溜まったときのサインを見分けることにつながります。
ブラッシングする
ブラッシングによるふんわりヘアは、蒸れを防ぎ、さらにマッサージ効果もあります。
これから散歩に出かけるようになると、ゴミや埃が毛に付着しますし、蚤取り用の櫛も必要。
散歩デビュー前からブラッシングを習慣づけるのはプラスです。
とはいえ、子犬にブラッシングする場合、表皮も薄く、肌は成犬の肌よりも敏感。
ブラシには力を入れずに、毛をほぐしてあげるようにブラッシングします。
ブラシは、柔らかい材質のものが子犬にも優しいです。
3-2. 飼い主とのコミュニケーションで絆を深める
飼い主さんによっては、飼う前から名前を決めている方もいると思いますが、犬と一緒に住むようになったら、毎日名前を呼んであげましょう。
来たばかりの子犬が驚かないように、やさしく小声で呼ぶようにしてくださいね。
・集中力を高めるアイコンタクト
いろんなことをしつける上で、最初に必要となるのは、自分が呼ばれていることを認識させること。
犬は、自分が呼ばれたことがわかれば、注意をこちらに向けます。
つまり愛犬をコントロールする最初のステップになるということを意味します。
なかでも、アイコンタクトは、ピンポイントで飼い主を注視させ、神経を集中させる力があります。
アイコンタクトができるようにしつけることは、集中力を高めることにつながり、飼い主の指示に対する理解力が深まります。
しつけの随所で愛犬を名前を呼ぶことは、飼い主に絶えず意識を向けさせ、集中力を継続させる言葉になるのです。
・愛犬の呼び名の統一
しつけの間、犬の名前を呼ぶときには、同じように呼ぶことが鉄則です。
例えば、「ココア」と名前を付けたら、「ココちゃん」「ココ!」などと呼ばずに、しばらくは「ココア」で統一しょましょう。
自分の名前であることを理解しているかどうかは問題ではありません。
音で意味を理解するといわれる犬は、同じ呼び方、同じトーンで呼ぶことで、条件反射的に行動するようになります。
ココア!と呼んだ時に振り向いてアイコンタクトできるようになることが大切なのです。
・しつけの理想は1対1
しつけの際は、犬の集中力を高めなければなりません。
外野が大勢いると、犬はアイコンタクトが取りにくくなりますので、指示する人以外は少し離れて、あるいは後ろから様子を見るようにしましょう。
2人以上で犬を見つめてしまうと、みんなからアイコンタクトを求められていると考え、犬の集中力が分散することになります。気を付けてくださいね。
3-3. 環境に慣れる
・家の中を冒険させる
家の中も、和室、フローリングの廊下、洋間のカーペット、洗面所のタイル、コンクリートの玄関、クッション、ケージのプラスチックなど触感の異なる場所がたくさんあります。
家の中のいろんな場所を歩かせてみましょう。
犬の散歩デビュー前に、首輪やハーネスを習慣づけることは、散歩の予行演習です。
飼い主が犬をリードでコントロールしながら家の中を歩かせることも忘れずに。
※ 子犬の時は、上半身を包み込むタイプのハーネスが首に負担がすくなくなるのでおすすめです。
アクセスを禁止するしつけも必要
また、家の中を歩かせるときに、テーブル、人が使用するソファーやベッドには乗せないようにしつけをすることも忘れないようにしてくださいね。
愛犬用のクッションやベッドを別に準備し、休む場所も決めてあげるようにします。
直ぐに準備できない場合は、お古のクッションやタオルでも全然問題なしです。
できれば丸洗いできる素材で専用ベッドを作ってあげてください。
ソファーに乗らないようにしつけることで、犬のフケや抜け毛がソファーやベッドに溜まらなくなり、飼い主は、フケや死毛、犬の汗脂が原因の汚れをコントロールすることができます。
例えば寝室や書斎への立ち入りを禁止するなど、犬がアクセスできる場所、出来ない場所、しても良いこと、悪いことの分別を教えるしつけ。
このようなしつけの積み重ねによって、犬の社会化が育まれます。
3-4. 音に慣れさせる
ちゃんとしたペットショップなら、ケージを叩かないような注意書きがあったり、店内はBMGは無し、または静かな音楽がが一般的。子犬は大きな音に慣れてないケースがほとんどです。
子犬を迎えたら、テレビや音楽のボリュームは絞って。
飼い主も、インターホンが鳴って慌てずに落ち着くことが肝心。飼い主が慌てると、そばにいる犬も「何事?」と、なりかねません。犬も慌ててしまいます。
生活音は徐々に慣らしていきます。
生活音に慣れ、音にも動じない気質を育てることは、犬の身の回りに起こる突発的出来事で無駄吠えを抑えることにつながりますよ。
3-5. 他人に慣れる
・人を招く
もし、知人や親戚が近くにいるようなら、家に招いて、普段見慣れない人に対しても怖がらないようにしつけることで、社会化が少しずつ育成されます。
家に招いた人を怖がらないようにするには、招いた人と触れ合い、印象を良くすることが近道。
例えば、おやつを上げるときには、普段家にいない人からおやつを与えると、犬は、「この人、良い人かも」と思うようになります。
飼い主以外にも自分を気遣う人がいることを体験させて、少しずつ他人との接点を広げると時間はかかりますが、社会性が生まれてきます。
今、一人暮らしで犬と一緒に住むケースが増えています。
子犬の時期、飼い主以外誰も知らない環境で育つと、人見知りをする性格になりやすいといわれます。
一人暮らしに限らず、来客が少ない場合は外の様々な様子を見せるようにして、子犬を環境変化に動じない気質に育てるしつけです。
・外の世界を体験させる
最初に説明したように、飼い主ができる子犬の社会化に適した期間はひと月程度。
子犬のしつけの中でも社会化の訓練は早いに越したことがありません。
早い方が素直に聞き入れやすく覚えも良いのです。
ワクチンを打って日が浅くても、ペット用のリュック やバッグ に入れて家の外の世界を体験させてあげましょう。
キャリーバッグは背負わずに抱えるように。
草木のにおいを感じ、見慣れない人や犬とすれ違い、犬は、様々な世界があることを散歩デビュー前に認識させることができます。
愛犬の社会化トレーニングの第一歩です。
初期段階ですぐに人慣れする犬もいれば、すれ違う時に怖さを感じる犬もいます。
散歩デビュー前のキャリーバッグでの外出は、ほかの人が近づいても動揺しないようにするためのしつけで、子犬が家族以外の人に慣れるための社会化トレーニング。
キャリーバッグにいる愛犬への気遣いを忘れないようににしましょう。
犬連れでの外出は、他の犬の飼い主さんとも近づきやすくなります。
親しくなれれば、先輩飼い主さんからのアドバイスが受けらるかも?!散歩デビュー前でもおすすめです。
3-6. 他の犬に慣れる
・積極的に散歩する
ほかの犬が近づいても怖がらないようにしつけをするためには散歩がおすすめ。
散歩の開始時期は、一般的に最後のワクチン接種後2週間と言われますが、子犬の健康状態なども様々。
気になる場合は、最後のワクチン接種時に、獣医さんに散歩に出かけられる時期などアドバイスしてもらうと安心ではないでしょうか。
パピーパーティー(パピークラス)に参加する
他の犬に慣れる方法として、「パピーパーティー」に参加するのもひとつの方法です。
他の犬と触れ合ったり、いろんな人と交わることは犬にとっても刺激的です。子犬の社会化しつけに必要な屋外での「こころ」と「からだ」の交流は、犬の脳の活性化にも貢献。将来的に犬の認知症予防にもなるため、飼い主の積極性は子犬時代の社会化形成のキーポイントともいえます。
自治体や公共施設の主催は稀で、各個人の動物病院、ペットホテルやドッグラン施設などが主催するケースがほとんど。
とはいえ、子犬の社会化期に参加するためのパーティーなので、様々なしつけの悩み相談を受け付けます。ほかの飼い主さんとも知り合える機会です。
参加できる条件や料金も異なりますので、ご自宅の近くのパピーパーティー情報を確認してみてはいかがでしょうか。
4. まとめ
今回は散歩デビューまでに飼い主ができるしつけについて説明しました。
飼い主は、愛犬の良きパートナー。組織に例えるなら上長です。遊ぶときや運動するときは、リーダーシップを発揮してトレーニングしましょう。
リーダーシップは子犬時期のしつけにおいて社会化トレーニングに不可欠な要素です。