猫の脱走防止の記事は、ほとんどがフェンスや柵の紹介です。とはいえ、柵だけで物理的に脱走を阻止しても根本的な猫の脱走対策にはなりません。
脱走を阻止するためには、猫の習性を考え、対策を講じることが大切です。
今回は、猫と一緒に住んでいる飼い主さんがすぐに始められる8つの脱走対策をご紹介。さらに脱走した際の探し方についても詳しく解説します。
一つひとつの対策では不十分だからこそ、幾重にも組み合わることで強固な脱走対策になります。
1. 猫が脱走する理由は?
脱走した猫を探している張り紙はよく見ますが、皆さんは、愛猫の脱走防止対策は十分ですか?
柵を設置しても隙を見せると脱走しようとする猫たち。なぜ猫は脱走したがるのでしょうか。その理由を考えたことがありますか?
1-1. 生まれながらのハンター気質
飼い主さんは猫がお腹をすかせたら十分な食事をあたえ、トイレをきれいに掃除して不満なく過ごせるようにしているのに脱走しようとする愛猫。
猫は、お腹を満たすだけでは満足出来ません。脱走の一因はハンター気質が原因。獲物を追いかけ捕まえることで初めて喜びを感じます。
そのハンター気質の俊敏性は、気配を消して飼い主さんの足元に接近し、ディフェンスをかいくぐって脱走する動きに垣間見ることができます。
飼い主さんが操る猫じゃらしを追いかけキャッチしようとする仕草は、いわばハンティングのシミュレーション。スキルを磨く練習ともいえるのです。
外の小さな虫に反応するのも同じ理由から。
獲物の動きを観察し捕まえたいと思う動機が脱走につながるのですね。
1-2. 飼い猫ならではのフラストレーション
野原で駆け巡っている野生時代の猫に比べたら刺激も少なく、至れり尽くせりの環境にある家猫たち。
やりたいことは全て飼い主さんが準備し飼い主さんに従う毎日。
一見王様のような生活ですが、何もかもお膳立てしたような生活、自分でやりたいことができない生活ではフラストレーションが溜まりますよね。
家猫は、限られた生活空間でやるべきことがなくなってしまうとエネルギーを発散する機会が失われ、物足りなささえ感じます。運動不足や欲求不満を解消するために外に出たいという猫の気持ちは理解できます。
1-3. 隙を衝く習性
ネコ科のライオンは、獲物を狙う時、相手に気づかれないように近づき、最接近したときに猛ダッシュをかけて獲物を捕らえます。
実は同じことが猫との実生活でも起きるのです。
猫の脱走は、来客中の玄関でのおしゃべりやベランダのちょっとした作業など、出入口を開けっ放しにする最中が最も多いです。
飼い主さんが、猫以外に気を取られ油断してしまった隙をみてこっそり近づき、最も近づいた距離で脱走するパターン。猫の気配に気づかなければ対策ができませんよね。
1-4. テリトリーの確認
窓から眺める景色が違い、部屋のレイアウトや家の中も違う、自身のニオイが全くない環境に置かれると猫たちは住み慣れた場所ではないことに気づき、自分の元の居場所を探すために家中を探検します。
転居した直後は、飼い主さんも新しい環境に慣れずに飼い猫まで気が回らなくなることよくあります。猫フェンスや猫柵を設置するのは生活環境が整った後になるため、猫の脱走対策が十分ではなく、猫も元の居場所を探すために脱走するケースが増えるといわれます。
猫が網戸越し眺める景色はすべて自身のテリトリーと考える。そこで起こるさまざまな光景が刺激的だとしたら、その場に身を置きたいと考えても不思議ではありませんよね。
たとえどんなに努力しても脱走につながる猫の習性を変えることはできませんが、脱走する気持ちを少しでも抑えること、今の住まいを猫が満足できる住環境に替えることは私たちにできる脱走対策です。
2. 猫の脱走対策
2-1. 避妊手術や去勢手術の実施
猫は、本能的にパートナーを探す傾向があります。
オス猫の場合、匂いを出してメス猫を誘い、メス猫は大声を出してオス猫に居場所を教えます。春先など発情期になると、猫たちは気持ちが落ち着かなくなることで脱走する確率が高まります。
外飼い猫なら避妊や去勢手術は絶対条件。完全室内飼いでも繁殖を目的にしないのであれば、避妊・去勢手術は脱走の気持ちを押さえる有効な方法です。
避妊・去勢手術の費用を一部補助してくれる自治体もあるようです。一度調べてみるとよいかもしれませんね。
2-2. 居心地のよい居住空間を創る
猫にとって食べること、遊ぶこと、寝ることは1日の三大楽しみです。猫が脱走する気持ちを少しでも抑えるためには、この3つを満足させる空間を作ってあげることで居心地の良い場所といえます。
寝場所
愛猫が落ち着いて寝る場所は確保していますか。寝て過ごしている間は、絶対に脱走しません。笑。
静かな場所で落ち着くことで初めて安心して休むことができる猫にとってファミリールームは必ずしもベストスポットではありません。
とはいえ、中には寂しがり屋の猫も。飼い主さんと一緒に休むことで安心します。
ファミリールームなら、部屋の隅、近くを歩かないような場所に隠れられるドーム型のベッドを設置してあげると安心します。寝室なら昼間は静かな空間で、日中お休みするにはピッタリの場所。猫ちゃんにも専用のにベッドやハンモックを設置すると安心してお休みすることができます。
出来れば夏は通気性の良いものを、冬は保温性の高いクッションやベッドを準備してあげることが一番ですが、夏用のベッドに冬用のひざ掛けを敷くことで冬用のあったかベッドに変わりますよ。
清潔なトイレと新鮮な水
猫は、とてもきれい好き。トイレが汚いと使わなくなりますので、常にきれいに保つようにするのは飼い主さんの責任です。
外飼い猫なら、自分たちで排せつする場所を探しますが、完全室内飼いの猫たちにとって、排せつ場所はトイレに限定されます。
猫の脱走との相関関係は定かではありませんが、猫のトイレ環境を整えてあげることは室内飼い猫にとって、とても重要です。
また、愛猫に気持ちよくトイレを使ってもらうためには、大きめのトイレが◎。猫トイレを購入する場合でも猫が楽にUターンできるぐらいの大きいサイズを選ぶと、万が一、飼い主さんが猫が用をたしたトイレに気づかなくても、きれいな場所を選んでトイレを使えます。
特に、一人暮らしや共働きなどで、猫が長時間留守番するような生活スタイルの飼い主さんは、大きめのトイレをおすすめです。
水の交換は小まめに。新鮮な水なら、猫もためらわずに飲むことができますし、給水環境が良いとおしっこも定期的にするようになります。
飲料水の交換は、健康管理のためにも最低1日1回、出来れば食事毎の交換が基本です。
2-3. 猫の習性を意識した部屋作り
猫は本来木登りをする動物。今、家の中にキャットタワーはありますか?
猫が自然界で生活していれば、木の上は獲物を遠くから眺める見晴らし台として、休むときにはより安全な居場所になります。
キャットタワーはいわば、猫の木登りシミュレーション。キャットタワーの柱が木の幹なら、途中のステップは木の枝に。家の中を自然界に近い環境に再現し、猫が地上と木の往来を再現する行動をサポート、より自然な満足感を提供するキャットタワーは、猫の眺望本能を満たし脱硝防止にも役立つアイテムと言えます。
その他、部屋の壁づたいにステップを設ける、本棚の一部を猫用に開放する、はしごを設置して上下運動ができる環境にしてあげると猫も喜びます。
キャットタワー同士を吊り橋で結ぶことも上からの眺めを楽しめる仕掛けになります。
突っ張り式やスリムタイプのキャットタワーなら自立式より土台が小さ目に出来ているため省スペースで設置しやすくなりました。
上級者なら同じタワーを2つ購入して、それぞれ部屋のコーナーに設置し、高さが同じになる最上部をキャットウォークでつなげることもアイディアのひとつです。
言うまでもなく、繋ぐところはDIYですよ。
最近は、モジュール形式のキャットタワーも販売されています。突っ張り式なので、壁に穴を開けずにキャットウォークを設置することができますね。
モジュール式の便利なところは、パーツを追加購入できる点。
追加のポールも突っ張り式。
同じ仕様なら見栄えもすっきりさせ、キャットタワーを拡張しながらキャットウオークを作ることができます。
ガラスに設置するハンモックも外の様子を伺うだけではなく、高さのある場所に設置することができるため見晴らしのよい高いところで休む猫の本能を満足させることができます。
本棚の一部を猫に解放したり、クローゼットやキャビネットの上部に登れる階段 を付ける等、上下運動ができる環境を整えてあげることで楽しめる環境になります。
2-4. 隠れ家や避難場所を確保する
家猫にとって、飼い主以外の誰かが侵入することは自分のテリトリーに敵が侵入するように思えるもの。
自分に危害を加えないことが確認できるまでは隠れようとします。
家の中に隠れ家を作ってあげることは、猫を家の中で安心させるために必要な措置です。
落ち着きたいときに落ち着ける場所を作りましょう。
スッキリした生活空間は人にとって気持ちよく感じることこそあれ、猫にとって身を隠す場所がない家は不安そのもの。
来客がある場合、押し入れやクロゼットの扉を少しだけ開けておくことで猫の避難場所としてっ使うことができます。
猫は、自分のお気に入りの居場所を見つけようとします。
カーテンの裏側は、日中、隠れながら日向ぼっこできるお気に入りの場所になりますが、夜間や寒い季節は気温が下がるため居心地が良いとは言えません。
ソファーの下は埃が溜まりやすく、別の場所で休んでほしいと考える飼い主さんなら、ドーム型のベッドは猫が安心して休むことができる場所のひとつです。
ベッドは静かな部屋の隅が落ち着けるところですが、猫にとっても飼い主さんに見守られていると感じる場所がベストポジションです。
2-5. 猫と触れ合う時間を確保
愛猫はツンデレ。
放っておいてほしいときもあれば、かまってほしいときもあるのが猫です。
昔ながらの「猫じゃらしは」家の中でも猫の狩猟本能を満たし、飼い主さんとインタラクティブに楽しめる定番の猫おもちゃですよね。
猫じゃらしに限りませんが、猫が飼い主さんと遊んで楽しいと思えるようになれば、結果的に脱走リスクが下がります。
2-6. あえて外を楽しむ
室内猫でもあえて外に出す選択肢があります。
飼い主さんと一緒に外出し、外の雰囲気や景色を楽しめる機会があれば、自分だけで外に出ようとする猫の気持ちをコントロールし脱走のリスクを軽減します。
とはいえ、外に愛猫を連れ出すときには、外で脱走するリスクを最小限に抑える必要がありますよね。
そのためには、首輪やハーネスが猫のサイズに合っていることを確認。外に出る前に緩みやバックルの故障がないか、リードがしっかり装着されているか、消耗していなか、など装具のコンディションを確認してから外出しましょう。
首輪もハーネスもしっかりつながっていれば逃げられることはありません。が、お散歩に慣れない飼い主さんにはハーネスがおすすめです。
猫に取り付けるハーネスは、特にやわらかな付け心地、フィット感が重要。
ハーネスは首輪と違い上半身全体を支えるため、愛猫がリードを引っ張っても首への負担が軽くなります。
2-7. 網戸とドアストッパー併用
ベランダや窓に網戸(スクリーン)があれば常に閉めておくのは猫の飼い主さんなら常識です。
とはいえ、網戸を閉めれば100%脱走を防げるわけではありません。
網戸はガラス戸に比べて圧倒的に軽く、構造上、爪も引っ掛かりやすく、一度開け方を覚えてしまうとふたたび開けてしまう可能性があります。
一方で、じゃばら式のスクリーンにも欠点があります。じゃばら式スクリーンは、網が固定されておらず、強く押すと簡単に外れてしまいます。
網戸は閉めておくことが絶対条件ですが網戸を過信するのは禁物です。
猫が簡単に網戸を開けないようにするためにおすすめするのが、窓や網戸などにお手軽に取り付け可能なウィンドウストッパー。工具不要、貼るだけのお手軽さならだれでも気軽に利用できますね。
2-8. 脱走防止フェンスの設置
賃貸の場合、網戸を勝手に取り付けることもできませんので、網戸のない場所では、突っ張り固定式の脱走防止フェンスを自作するという選択肢もあります。
突っ張りタイプのフェンスなら建物に穴を開けたり、引き戸を改造する必要もありませんし、ホームセンタに行って突っ張り棒とスチール網など材料を調達すれば費用の面で安く仕上がります。
設計したり、場合によっては工具も必要ですが、大変な分だけ、出来上がったときの感慨もひとしおです。
手っ取り早くつけるのであれば、施工が簡単な脱走防止フェンスを購入してもよいかもしれません。
そのほか、開閉可能な玄関や廊下に設置できる柵もあります。
猫の脱走は、来客中の玄関でのおしゃべりや、ベランダのちょっとした作業など、出入口を開けっ放しにする最中に起こります。物理的に柵を設けることで脱走防止に役立ちます
設置する際には使用可能な幅を確認することが必要ですが、設置後の高さも考えてくださいね。猫が簡単によじ登れたりジャンプして手を最上部のバーに掛けられたら脱走防止になりません。犬用と猫用では柵の高さが違いますので、猫の脱走防止柵は必ず猫用を!
3. 事前に可能な脱走対策
3-1. 首輪 + 迷子札着用
猫が完全室内飼いの場合でもアクセサリー感覚で首輪をつけますよね。
実際、首輪をつけた猫は飼い主さんがいる飼い猫の証。はっきりと野良猫と区別することができます。
とはいえ、室内で飼われている場合、連絡先を入れた首輪をすることは稀ですよね。迷子札は家猫であっても、万一脱走した際、猫を保護した方が飼い主さんに連絡をする方法になります。首輪を付けたら一緒に猫の名前と飼い主さんの連絡先を書いた名札(迷子札)を付けることは、迷子になった猫の発見の大きな助けになります。
3-2 マイクロチップを埋め込む
マイクロチップについては、聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
マイクロチップは、犬や猫の繁殖業者(ブリーダー)が子猫、子犬が産まれたときに登録が義務付けられているもの。
ブリーダーからペットショップに、ペットショップから一般の飼い主さんに、譲渡されるごとに所有者の変更手続きをして所有者を追跡・特定するものです。
ですので、子猫が誕生した時には、一般の飼い主さんも同様の措置を取らあなければなりません。
日本では令和4年6月1日からマイクロチップは義務化されましたので、お知り合いの方から譲り受けた生まれたばかりの子猫にマイクロチップが埋め込まれてなければ忘れずに手続きが必要です。
保護したときに、飼い猫なのかを判別し迷子になったペットであれば、所有者情報を追跡することで、飼い主を見つけることができます。
とはいえ、マイクロチップは、からだの中に埋められています。
野良猫なのか、外飼い猫なのか、迷子猫なのか一見して判別できません。となると、迷子札は見つけた人がすぐに飼い猫と判断できる目印ですね。
4. 脱走した猫の探し方
どんな脱走対策を施してもヒヤッとするケースが起こるもの。それでも逃げてしまった際の対応方法は把握しておきましょう。
4-1. 脱走猫の行動
猫は自分の居場所を確認しながら移動するため1日の行動範囲が半径50メートル程度と言われます。
帰巣本能があるとはいえ、好奇心が旺盛な猫の場合、どんどん遠くへ離れていくことも考えられます。2日、3日と経過するごとに行動範囲がひろくなるため脱走に気づいたらたらすぐに対策しましょう。
4-2. 脱走猫の探し方
猫は習性上、茂みの中や縁の下などに隠れながら移動します。脱走に気づいたら、まずは、近所でも目立たない暗がりを中心に探してみましょう。
愛猫の名前を呼ぶ
上智大学総合人間科学部心理学科の研究グループによると、猫は、自分の名前と普通名詞の区別が付くため、自分が呼ばれていることを認識できるという研究結果を発表しています。
つまり、愛猫は自分の名前に気づいたら、隠れていても姿を表す可能性が高いということを意味します。
自分が呼ばれていることを認識するようになるのは、普段の生活における猫とのコミュニケーションが要因。普段から愛猫を名前で呼ぶことは、脱走後、発見する際に大きな助けになるかもしれません。
ご近所へのポスター掲示
最近撮影した写真と一緒に連絡先を記入し張り紙します。張り紙の仕方はこちらを参照
- 写真は正面からの顔写真と真上やヨコで猫柄模様のわかる写真の最低2つ掲載
- 脱走した場所(x丁目付近、スーパー○○の近くなど)
- 脱走に気づいた時間
- 猫の特徴。種類、性別、毛色(尻尾も含めて全体的な色)、体長(大体でOK)、年齢
- 脱走した当時、猫が身に付けていたアクセサリー、例えば首輪、ひも、リボン等の色、材質など
- 愛猫の名前と連絡先(携帯番号)も忘れずに!
張り紙をする場合、自治体の掲示板なら、自治体に。ご近所の家やお店の壁に貼る場合は、所有者の許可を取るなどしてから貼ってくださいね。
SNSの利用
猫が脱走したら、脱走した町名や近くの施設名と一緒に迷子猫等のハッシュタグを入れて発信することで、地域の情報を探している人にSNSを見てもらうことができます。些細な情報でも発見の近道になります。
警察署・保健所・動物保護センターへの連絡
警察署に遺失物届(猫ちゃんは「モノ」なのですね)を出すこと、各自治体の保健所にもお知らせすること、近隣の動物愛護センターにも連絡を取って、届け出られたときに連絡できるようにしておきましょう。
5. まとめ
脱走対策は、脱走させないための予防策と、脱走した際に見つかりやすくするための対策に分かれます。
どの対策も100%安全ということはないので、二重、三重の対策を重ねて、それでも脱走した際の善後策を講じることが万一に備える脱走対策です。
猫は、気ままな動物だと思って愛猫との時間をおろそかにしていませんか?
家の中は猫にとって限られたスペースであり、ちょっぴりであっても外の世界を知っている猫にとって閉じ込められた状況にあるのです。
家の中で興味を惹きつけ、より楽しめる場所であることを認識させるには、飼い主さんとのインタラクティブな遊びが絶対必要なのです。
脱走したいと思う気持ちを抑える心理的な対策、脱走阻止する物理的な対策。この2つを併用することが脱走防止には必要です。
脱走後、無事に戻ってきたら、脱走対策の強化も忘れずに。